ずるいデッドリフト

ずるいトレーニング

こんにちは、鹿野一郎です。
今日はずるいデッドリフトについて話したいと思います。
もちろん、トレーニングの目的や方法は人それぞれなので、他の人がやっているトレーニングについて文句を言うつもりはありません。
ただ、自分のこれまでのトレーニングを振り返っても、以前はずるいやり方をしていたなと思うので、そのことを語りたいんです。

床引きデッドリフト

デッドリフトは主に背中を鍛える種目で、床に置いたバーベルを上体を起こす動作で引き上げる種目です。
いや、種目という言い方は変ですね。
僕はパワーリフティングをしているので、種目という言葉を使いますが、普通に言えばトレーニングのメニューですよね。
僕は一応、パワーリフティングをする前から、デッドリフトはたまにやっていました。
MAX重量は150kgぐらいでした。


最初の1回目が挙がると、2回目以降は簡単にぽんぽんと挙がりました。
最初の頃は、そういうもんなんだろうと思っていましたが、そうではありませんでした。
床でのバウンドを利用をすると、明らかにバーベルが軽くなるんです。
その当時はそんなことも知らずに、「150kgが8回挙がった!」なんて喜んでいました。
インターネットの口コミなどでも、デッドリフトは最初の1回が挙がれば、2回目からはぽんぽん挙がるというコメントを見ていたので、それが当然なんだと思っていました。


が、ある日、パワーリフティング93kg級のハリー選手のデッドリフトの動画を見て驚きました。
彼は全く反動を使わずに、バーベルを床に落としたら、完全に静止させて、それから次の回へと移っていました。
「これじゃあ、物凄く疲れるんじゃないかな?」と思いましたが、翌週、僕も同じようにやってみました。

市原ゼットエー武道場。パワーリフティング千葉県大会は、主にここで開催されます。


全然だめでしたよ。150kg8回なんて嘘で、2回ぐらいしか出来ませんでした。
僕は友達には「デッドリフトは150kgが8回挙がるよ。」と言っていましたが、結果として嘘を言っていたことになってしまいました。
ずばり、ずるいデッドリフトです。

そう考えると、人と話をするときは気をつけなければいけないかも知れないですね。
僕は現在はデッドリフトは184kgのバーベルで5回連続挙げることができますが、このときに「床引き」であると伝えるだけでなく、ちゃんと「止め」を入れていると言わないといけないかも知れません。
バウンドを使った5回と止めを入れる5回では全然重さが違うからです。

自分のバーベル
僕のバーベルです。これは194kgのバーベルです。カラーはギリギリつけられます。

上から始めるデッドリフト

デッドリフトは、床引きが基本だと僕は考えていますが、バーベルを膝ぐらいの高さにセットして、そこからスタートし、床でバウンドさせて元の高さまで引きあげて1回と数えるデッドリフトもあるようです。なんという名称だったかは覚えていません。


この方法だと、デッドリフトはさらに楽になりますよね。
床引きでバウンドを使う場合は、本当に重いのは最初の1回だけで、2回目からはバウンドのアシストにより軽いバーベルを挙げていることになります。
でも、この上から始めるデッドリフトは、最初の1回目からバウンドのアシストを使えるので、とても軽くなるでしょう。
別のこの種目自体がずるいと言っているんじゃありませんよ。
トレーニングの目的と方法は千差万別なので、他所様のすることに口出しをするつもりはありません。


でも、もしトレーニング好きのA君、B君、C君が集まってデッドリフトの話をしているとき、偶然全員150kg8回だったとしても、その中身がまるで違う可能性があります。

A君は床引きで、止めを入れるデッドリフトで150kg8回、B君は床引きでバウンドを入れるデッドリフトで150kg8回、C君は上から始めるデッドリフトで、150kg8回だったとしましょう。

こうなるとA君とC君では力の差は歴然としていて、A君の方が圧倒的に強いことになります。

もしこの三人が、「180kgなら1回だけ挙がる。」と言っている場合、A君とB君はそれほど力の強さが変わらないかも知れないですが、それでもやっぱりC君はこの二人より劣るということになるんでしょう。


なので、友達同士で強さを比較するときは、色々細かい条件まで言わなければ比べられないんでしょうね。

さらに厄介なのは、A君が床引き止めありのデッドリフトで170kg4回、B君が床引きバウンドありのデッドリフトで170kg8回、C君が上からのデッドリフトで170kg10回なんていう場合は、もはや比較は不可能ですよね。
どうしても比べたいなら三人でジムに行き、統一したルールで実際に勝負するか、または三人ともパワーリフティングの試合に出るしかないと思います。

ワイドスタンスのデッドリフト

パワーリフティング93kgの選手のハリーさん(本名風張徹さん)の動画を見続けるうちに、あることに気がつきました。
それは立つときの足幅が異常に広いことです。


それまで僕がやっていたデッドリフトでは、足幅は手幅より狭かったんですが、ハリーさんは足幅の方が手幅よりだいぶ広いです。

鹿野一郎
鹿野一郎

なんだ、あれは?


と思いましたが、足幅を広くすると体の重心が下がるので、バーベルを持ち上げやすくなるのかも知れないと思いました。
で、翌週に試してみましたが、慣れないフォームのため、全くできませんでした。
でもパワーリフティングの動画を見ると、みんな足幅を広くとっているので、僕もそれを練習することにしました。
僕がそれまでやっていたのがナロースタンスのデッドリフトで、世間で最も普通のデッドリフトだと思います。

成田市体育館のトレーニングルームです。昔良く通いました。


でもパワーリフティングをしている人の多くはワイドスタンスでデッドリフトをしています。
ワイドスタンスの他に、スモウスタイルという呼び方もあるそうです。
僕は2016年12月の千葉県大会で初めてパワーリフティングの試合に出ましたが、このときは全てナロースタンスで試技に挑みました。
140kg、150kg、160kg全て成功でとても嬉しかったです。


このときはもうワイドスタンスのデッドリフトを練習していたんですが、120kgぐらいが限界で、ナロースタンスの方が強かったので、試合ではナロースタンスをやりました。


でも、その後、すぐにワイドスタンスがナロースタンスを逆転したため、もうナロースタンスのデッドリフトはしなくなりました。

僕のデッドリフトのベストは、自宅のバーベルで、床引き止めありで194kg2回ですが、ワイドスタンスで挙げたものです。
もし、「ワイドスタンスはずるいデッドリフトだ。ナロースタンスこそ、真のデッドリフトだ。」と思っている人が僕の話を聞いたら、無意味な発言をしているようにしか聞こえないんだと思います。

190kgのバーベルです。これは僕が通っているジムのバーベルです。

ハーフデッドリフト

ある日、ゴールドジムでスクワットをしていると、隣のパワーラックでガタイの良いお兄さんがデッドリフとを始めました。
でも見たことがないデッドリフトでした。
セーフティーバーをふくらはぎぐらいの高さに調節して、そこにバーベルをセットしてデッドリフトをするんです。
なんで床に置かないんだろう?
と不思議でしたが、そのお兄さんは180kgのバーベルで次々にデッドリフトを決めていきます。
僕はそれを見て驚嘆しました。
なんという強い人なんだろう!
これが素直な気持ちでした。
このときはまだハーフデッドリフトとか、トップサイドデッドリフトという言葉を知りませんでした。

佐倉市民体育館のトレーニングルームです。昔通いました。


脚に負担をかけず、背中を集中的に鍛えたいときはこの種目をするそうです。
次の週に真似をして、同じようにデッドリフトをしてみると、バーベルが随分と軽いことに気がつきました。


なるほど、高い位置にバーベルをセットすれば、デッドリフトではバーベルが軽くなるんだなと、この時気がつきました。
でもこの当時の僕には確か、180kgのハーフデッドリフトはまだ出来なかったと思います。

ハーフデッドリフトが床引きのデッドリフトよりだいぶ楽であることを知ったときは、「ずるいデッドリフトだ。」と思いましたが、別にその人はその重量、回数を自慢しているわけではなく、単に背中を鍛えているだけなので、全て僕の勘違いというもんですね。

ゆっくり下ろすか、ドスンと落とすか

床引き、止めあり、ナロースタンスのデッドリフトをする人が二人いたとします。
D君は周りへの配慮から、デッドリフトでバーベルを床に下ろすときは、ゆっくり静かに下ろします。
一方、E君はジムにちゃんとしたデッドリフトのプラットフォームがあるため、毎回重力に任せてドスン、ドスンと落としています。
二人とも180kgで5回出来るとしましょう。
でも二人の強さは同じとは言えないと思います。
やっぱり、静かに下ろす方が力を使うので、疲労が大きいと思います。
僕は数年前の夏に、本八幡のゴールドジムでデッドリフトをやりましたが、そのときは調子が良くて、170kgを9回挙げることができました。
そのときはとても嬉しかったですが、床のクッションがよく効いていたため、バーベルはドスンと床に落としていました。


それでも平気なぐらいにクッションが分厚いんです。
今から思えばあれはずるいデッドリフトでした。

僕は普段は自宅でデッドリフトをしています。
僕の部屋は木造住宅の二階にあります。
そこでデッドリフトをするんですから、バーベルをドスンと床に落とせるはずがありません。
ゆっくりゆっくりおろします。
でないと家を破壊してしまうからです。

最大筋力換算表

世の中には最大筋力の換算表というのがあります。
インターネット上にも溢れかえっています。
計算の公式も出回っています。
それによると、例えばデッドリフトの150kg8回は最大筋力186kgに相当します。
180kg8回は223kgに相当します。
でも、これはどうなんでしょうか?


同じ180kg8回でも、バウンドを使うか、止めを入れるかで大きく変わります。
まして、上から始めるデッドリフトだったら、もっと大きな差が出ます。
僕はこれまで、てっきりこういう表は床引き止めあり、ゆっくり下ろす、を前提にして見てきましたが、人によって見方がかなり違う可能性もありますね。


やっぱり、最大筋力を語るならば、本当に挙げた重さで話すしかないようですね。
僕はデッドリフトでは自宅の194kgのバーベルを2回挙げたのが最高です。
僕のバーベルは最高で194kgまでしか組めないので、200kgに挑戦したくも出来ないんです。
最大筋力換算表の精度を疑うわけではありませんが、それに適用する「回数」を、どうやって挙げた回数なのかまで厳密に指定しないと、一定の誤差が出ることになると思いました。

バーベルシャフトの硬さ

最後に、バーベルシャフトの硬さによってもMAX重量が変わることを話しておきたいです。
バーベルシャフトには、しなりにくいものとしなりやすいものがあります。
しなりやすいバーベルシャフトというのは、材質が柔らかくて、バーベルを組んだときの右のバーベルと左のバーベルの間の距離が長いバーベルです。
逆に硬い材質で、左右のバーベルの間の距離が短いバーベルはとてもしなりにくいです。
そして、同じ重量でも、しなりやすいバーベルシャフトを使った方がデッドリフトは挙がりやすくなります。


昔、ある動画をしました。
外国人の大男がタイヤをつけた長いバーベルでデッドリフトをする動画です。
それは試合の映像ではなく、何かのショーなのでしょー。
その大男はステージの上でバーベルシャフトにストラップを巻き付けます。
観客はとても大勢いて、コンサート会場のようでした。
そして大男がバーベルを引き上げにかかると、シャフトが大きくしなって、タイヤは一向に持ち上がりません。
その大男の上体がほぼ真っ直ぐに起き上がったところで、初めてタイヤが床からわずかに浮きました。
それを見たとき、何か違和感を感じました。


でも一応、全てのタイヤが宙に浮いたんだから良いのか、と思いましたが、全然違いますよね。
最後の最後でやっとタイヤが床から離れたならば、それは床引きのデッドリフトではなく、ハーフデッドリフトです。
いやハーフなんてものではなく、ほとんどデッドリフトではないと言った方が良いでしょう。
このようにしなるシャフトだと、全重量がかかる位置が高くなり、事実上床引きのデッドリフトではなくなるんです。

メーカー別にいうとIVANKOのオリンピックシャフトは柔らかいと思います。
僕はかつてIVANKOのバーベルシャフトとプレートで一回だけ200kgのデッドリフトに挑戦したことがあります。
でもそのときは、シャフトがしなるだけで、プレートは全く持ち上がりませんでした。
僕はこの時に初めてシャフトがしなることを経験しました。
おそらくシャフトがしなってもバーベルが挙がってしまえば、気づかないんだと思います。

パワーリフティングの試合会場で、デッドリフトのバーベルシャフトがしなるのを見たことはありません。


BULLとかELEIKOのシャフトだと、おそらくそう簡単にはしならないんだと思います。
例えば強い選手が250kgとか270kgの試技に失敗してバーベルがびくともしないときは、シャフトもびくともしません。
試合会場でシャフトがしなるのは見たことがありません。
競技用のバーベルシャフトは特別に硬く作ってあるんですね。

パワーリフティング千葉県大会の、ウォームアップ用のバーベルです。

結論

結論として、デッドリフトで何kgが何回挙がるという情報を友達と交換するときは、あくまでも天気の挨拶程度のつもりで受け答えをするのが良いのだろうと思います。

その会話で優劣を決めようと思っても、回数の差が小さい場合は、状況によっては逆転もありうると思います。
本当に優劣を決めたかったら、パワーリフティングの試合で決着をつけるしかないですね。
なので、自己ベストを自慢したい人は、パワーリフティングの試合に出ましょう!
そうすれば、正確なベストを知ることができます。
(そして、試合に出ると自慢したい気持ちは消え去ると思います。)

ありがとうございました。

内部リンク「ずるいベンチプレス

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