こんにちは、鹿野一郎です。
2018年12月のパワーリフティング千葉県大会に向けて、初めてピーキングを試してみました。
ピーキングというのは、試合に向けた調整方法のことで、徐々にトレーニングの重さを増やしていき、回数を減らしていくというものです。
回数は、減らすというより、重くなるから減っていくという方が正しいです。
今回はこの時の思い出の話をしたいと思います。
ピーキングとは
普段トレーニングをしていると、同じ重さのバーベルなのに、「今日はやたらと軽いな」と感じたり、逆に「今日はやたらと重いな」と感じる事があります。
この「今日はやたらと軽いな」という状態を意図的に作るのがピーキングです。
トレーニングの重さと回数を調整して、意図的にピークを作るんです。
ピーキングは、パワーリフティングの選手の間ではかなり広く行われているようです。
インターネットで記事を読んでピーキングのことは知っていましたが、この年の夏のパワーリフティングのチーム「バーベル野郎!」の集まりで、幕張さんからもピーキングの話を聞かせてもらったので、試してみることにしたんです。
やっぱり、インターネットで活字で読むのと、実際に経験している人から体験談として直接聞かせてもらうのでは、説得力が違いました。
ピーキングは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの三種目でやってみましたが、ここではスクワットに絞って話したいと思います。
結論を先に言ってしまうと、すごく効果があったと思いますが、精神的なプレッシャーもすごく、全て投げ出したくなったこともありました。
効果も大きいけど、苦痛も大きかったという感想です。
具体的な内容(スクワット)
ピーキングを始めたのは2018年10月4日で、試合の8週間前でした。
そこから8週間かけて徐々にピークを作って行きました。
この当時、僕はスクワットでは160kgを3回あげるのが精一杯でした。
なので140kgから初めて、毎週5kgずつバーベルを重くして行きました。
最終的に175kgまで挑戦するスケジュールで、本番で175kgが挙がったら嬉しいなと思っていました。
毎週バーベルは重くなって行きますが、毎回8回2セットを目指してやっていきます。
もちろんバーベルが重くなると8回は出来なくなりますが、それでも試合が近づくに連れて重くして行きます。
ただ、セット数は絶対に2セットで終わりで、3セット目、4セット目というのはやりません。
実際にやった内容は以下の通りでした。
10月04日 140kg 8回、8回 ボリューム2240kg
10月11日 145kg 8回、7回 ボリューム2175kg
10月18日 150kg 8回、6回 ボリューム2100kg
10月25日 155kg 8回、3回 ボリューム1705kg
11月01日 160kg 7回、3回 ボリューム1600kg
11月08日 165kg 4回、5回 ボリューム1485kg
11月15日 170kg 5回、1回 ボリューム1020kg
11月22日 175kg 2回、0回 ボリューム350kg
3セット目がないと思うと、2セット目で全ての力を出し切らなければなりません。
普段だったら、「この辺でいいか。次のセットもがんばろう。」と思う場面でも、次のセットがないと思うと、とにかくバーベルを挙げるしかないんです。
きっちり限界まで追い込まなければならないというのは、精神的に非常に厳しかったです。
普段から各セットを限界までやっていたつもりでしたが、ピーキングを経験して、そうではなかった事がわかりました。
普段は、無意識のうちに「この辺でいいか。」と思って、やめていたんだと思います。
これをやってみて思ったのは、次の3つでした。
(1) 精神的にとてもきつい
(2) 体力的にはだんだんきつくなくなっていく
(3) 効果はあったと思う
精神的には本当にキツかったです。
もう当分の間やりたくないぐらい、キツかったです。
上の表を見ると、すごく楽に見えると思いますが、本当にキツかったです。
3セット目はないので、とにかく2セット目は限界まで追い込むしかないんですが、バーベルが重くなるほど、限界まで追い込むのが怖くなるんです。
怖いけどやらなければいけないので、本当に精神的にキツかったです。
限界まで追い込むというならば、毎回潰れるまでスクワットを続けたのかというと、そうではありませんでした。
潰れたのは11月22日の175kgだけでした。
ピーキングは8回2セットを基本としていて、8回できたら余力があってもそこで終わりです。
なので上の表には9回以上の回数がないんです。
毎回9回目で潰れていた訳ではありません。
では、そのほかの7回とか6回というのは潰れなかったのかというと、潰れていません。
まだ脚の筋力には余力がありましたが、息が上がってしまって、もう続けることができない状態になっていたので、そこで打ち切りにしたんです。
スクワットは他の種目と違って、筋力より先に心肺機能が限界に達してしまうということがよく起こると思います。
少なくとも僕の場合は、頻繁にそれが起こります。
筋力が限界に達していないならば、3セット目をやりたくなりますが、とにかく2セットで終わりにしなければなりません。
バーベルが重くなるに従って、こなせる回数がどんどん減っていくので、トレーニングのボリュームは減っていきました。
ボリュームとは、バーベルの重さと挙げた回数を掛け合わせてものです。
ボリュームが減っていくので、体はだんだん楽になって行きました。
普段のトレーニングでは、僕はスクワットとデッドリフトは別の日にやっていましたが、ピーキングが進んで体に余裕が出てくると、同じ日にスクワットとデッドリフトをするようになりました。
そのぐらい、体力的には楽になって行きました。
最近の研究では、筋肥大の効果は、1週間あたりのボリュームで決まると言われているそうです。
なのでピーキングが進むにつれて、筋肥大の効果は小さくなります。
でも、逆に高重量を扱うようになっていくので、筋力増大の効果は大きくなると思います。
そして効果はあったと思います。
それは試合会場で170kgのバーベルを担いで、しゃがんで立ち上がったのがこの2018年12月の試合だけだったからです。
2019年の4月の試合では165kgで潰れ、2019年12月の試合では170kgで潰れました。
そして2020年9月の試合では165kgで2回も潰れています。
これを考えるとピーキングの効果はあったと思います。
試合当日(2018年12月2日)
さて、ピーキングが終わって、12月2日に試合の当日を迎えました。
事前の計画では、170kg、180kg、190kgと挑戦して、190kgも挙がるかも知れないと思っていました。
とんでもない思い上がりですが、本当にそう思っていました。
でも170kgが簡単に上がるとは思ってなくて、全ては最初の170kgにかかっていると思っていました。
そして結果は、スクワットを170kgで3本連続で失敗して失格になりました。
失格になりましたが、この時のスクワットは非常に調子が良かったです。
この様子を記した投稿は、下にリンクを貼っておきますので、興味がある方はそちらもどうぞ。
(興味がある人がいればですが。その前にこの文章を読んでくれている人がいればの話ですが。)
第一試技、170kgのバーベルを担いで、しっかりしゃがみ、立ち上がりました。
成功だったはずなんですが、精神的に舞い上がっていたのか、審判の「ラック」の合図の前に右足を前に出してしまって失敗になりました。
第二試技と第三試技も一応170kgのバーベルを担いで、しゃがみ、立ち上がりましたが、こちらはしゃがみが浅いということで失敗になりました。
この2018年12月2日は僕のそれまでの人生で、最もみじめな1日になりました。
でも、試合で170kgのバーベルを担いで、しっかりしゃがんで立ち上がったのは、2021年4月現在では、この時だけでした。
もっというと、170kgのバーベルを担いで、3本とも立ち上がったのはこの時だけでした。
なので、ピーキングには効果があったと思っています。
反省点
この時のピーキングについて反省点があります。
おそらく160kgあたりから、全てしゃがみが浅くなっていたんだと思います。
僕はピーキングを始める前は160kgでは、せいぜい3回しか出来ませんでした。
当時の僕にとって160kgのバーベルでスクワットをするのは、怖いことでした。
潰れたらどうしよう、後にひっくり返ったらどうしようという恐怖感を常に感じていました。
しっかりしゃがまなかったら試合では失敗になるのに、回数を追求するあまり、しゃがみが浅くなってしまったようです。
スクワットはゴールドジムで、タフスタッフのパワーラックを使ってやっていました。
パワーラックの中にいても、当時は恐怖感を感じていました。
ところがピーキングを始めて、160kgに挑戦する週になると、1セット目で7回も出来たもんですから、自己ベストを大幅に更新したと思い、有頂天になりました。
本当にそれだけの力がついていたなら良いですが、結局はしゃがみが浅かったんだと思います。
当時のスクワットの様子を撮影していたならば、浅かったかどうかはっきりわかりますが、当然撮影などしていないので、今となっては真相は不明です。
でも165kg、170kgのバーベルがあんなに簡単に挙がるはずはなかったので、浅かったのだろうと思っています。
このような状態にならないための対策としては、重いバーベルだけでなく、軽いバーベルでのトレーニングも併用した方が良いと思っています。
重いバーベルでしゃがみが浅くなっても、軽いバーベルならばしっかりしゃがめるので、両方やることによって、しゃがみが浅くなっていることを自覚できると思うんです。
ピーキングのその後
でも、この時以来もうピーキングはしていません。
2021年4月現在、僕は2020年6月に始めた5/3/1プログラムによるトレーニングを続けています。
そして現在は、180kgのバーベルを担いでスクワットは2回出来るようになりました。
もちろんしっかりしゃがんでいます。
かなり効果が出ていると思っているので、特にピーキングをする必要は感じていないんです。
このまま次の試合まで5/3/1プログラムを続けて、そのまま試合に臨むつもりです。
ピーキングは精神的にかなりキツかったので、もう当分はやりたくないです。
もし、5/3/1プログラムで効果が出なくなるようなことがあれば、その時は再び試してみるかも知れないです。
専門用語?
試合の数日後、同じチームの幕張さん、船橋さんに偶然ゴールドジムで会った時、船橋さんは幕張さんについて次のように言っていました。
「幕張さんは凄かったよ。バーベルにさわってないのにベンチプレスで160kgを挙げたんだよ。」
僕はどう答えて良いのかわかりませんでした。
バーベルにさわらないで持ち上げるというのはどういう事でしょう?
念力で持ち上げたという話のはずはないし、そんな冗談を言うような場面でもありませんでした。
僕が恐る恐る尋ねると、「さわっていない」と言うのは「ピーキングをしていない」と言う意味だと教えてくれました。
突然試合に出ることが決まって、ピーキングもできないままに試合会場に行ったのに、ベンチプレスで160kgをあげたから凄いという話だったんです。
世間一般でもこのような言い方をするのかどうかはわかりませんが、僕が所属しているチーム内では、こういう言い方をしているようです。
というより、ベンチプレスで160kgは無条件にすごいと思います。
以上、簡単なピーキングの思い出でした。
ありがとうございました。
内部リンク。5/3/1プログラムの紹介
内部リンク。2018年12月パワーリフティング千葉県大会に出場