こんにちは、鹿野一郎です。
今回はウエイトリフティングのバーベルについて話したいと思います。
僕がウエイトリフティングの中継を始めてみたのは、1984年のロサンゼルスオリンピックでした。
僕が高校二年生の時でした。日本にとっては8年振りのオリンピックでした。
日本やアメリカは1980年のモスクワオリンピックを政治的な理由でボイコットしたため、僕にとっては9歳の時に見たモントリオールオリンピック以来でした。
モントリオールオリンピックの時は、小さい子供だったので、オリンピックというものを理解していませんでした。
ただ、テレビに映る体操の選手の人間離れした技を見て、「これがオリンピックか!」と思ったのを覚えています。
1 オリンピックのウエイトリフティング
中学生になって、モスクワオリンピックが近づくと、テレビでは「がんばれ日本!モスクワは近い」というキャッチフレーズのコマーシャルが大量に流れるようになりました。
柔道の山下選手やマラソンの瀬古選手を応援していましたが、日本はモスクワオリンピックをボイコットしました。
当時中学生だった僕はこの意味を理解できませんでした。
日本がオリンピックに参加しないということは、代表選考を勝ち抜いた選手たちはオリンピックに出場することができなくなります。
また、日本でもオリンピックのテレビ中継はしないことになります。
僕はこのことを理解せず、いつになったらモスクワオリンピックが始まるんだろうと思っていました。
友達に聞くと「とっくに終わったよ。」と言われ衝撃を受けたものでした。
それから4年が経過して、待ちに待ったオリンピックが開催されました。
アメリカのロサンゼルスです。
いろいろな競技がテレビで中継されましたが、なぜか印象に残っているのはウエイトリフティングでした。
全く聞いたことない外国の選手が次々とバーベルを挙げるのを見て、なぜか面白いと感じていました。
父は、「こういう人気のない種目はあまり面白くないんだよ。そのうち陸上が始まると面白いぞ。」と言っていました。
ロサンゼルスオリンピックでは、アメリカのカール・ルイス選手が陸上で金メダルを4つ取り、世界のスターになりました。
マラソンでは日本の宗猛(そうたけし)選手が4位に入りました。柔道の山下泰裕選手は右足を負傷したにもかかわらず金メダルを取りました。
そのような中で、僕はウエイトリフティングの中継は全て見たと思います。
バーベルを挙げた選手が、バーベルを床に落とすのを見て、「いいのかな?」と思ったものでした。
ウエイトリフティングでは日本の三宅裕美選手が2012年のロンドンオリンピックで銀メダルを獲得しましたが、彼女もやはり挙げたバーベルは床に落としていました。
ウエイトリフティングの選手は例外なく、頭の上に挙げたバーベルをそのまま床に落とします。
2 ウエイトリフティングではバーベルを床に落とす
でも、ジムでそんなことをしたら確実に怒られます。
まず危ないし、次にバーベルが壊れるからです。
どうしてウエイトリフティングのバーベルは床に落としても大丈夫なのだろうかと思って調べてみると、ウエイトリフティングのバーベルのプレートは、他のプレートとは作りが違うことがわかりました。
ウエイトリフティングのバーベルのプレートは全てラバーコーティングをしてありますが、そのコーティングが普通のラバープレートよりも分厚いのだそうです。
最初から落とすことを前提にしているので、それでも壊れないように作ってあるんです。
それだけでなくウエイトリフティングのプラットフォームも、バーベルを落としても壊れないように作ってあります。
インターネットを調べてみると、プラットフォームやバーベルの衝撃テストの映像を見つける事ができます。
200kg程度はあろうかというバーベルをわざと高いところから落として、床が壊れないことを確認しているんです。
この辺はパワーリフティングと大きく違います。
まず、パワーリフティングではバーベルを床に落とすことは禁止されています。
例えばデッドリフトで250kgのバーベルを引き切ったとしても、「ダウン!」の合図でバーベルを床に落としたら失敗になります。
バーベルは床に静かに下さなければならないんです。
また、バーベルのプレートもウエイトリフティングのものとは違います。
ウエイトリフティングのプレートは、床に落とす事を前提にしているので、分厚いラバーコーティングがされていますが、パワーリフティングのプレートにはラバーコーティングはありません。
とにかく重いバーベルを組めるようにするために、プレートはなるべく薄く作ります。
でも直径は決まっているので、プレートに持ち手用の穴を開ける事はせず、表面の凹凸もなるべく無くして、ペッチャンコの円盤の板にします。
とても薄く作ってあるので、パワーリフティングのプレートで組んだ100kgのバーベルはとても軽そうに見えます。
このような違いがあるため、ウエイトリフティングとパワーリフティングでは扱うバーベルが全く違うんです。
では、なんでウエイトリフティングの選手はバーベルを床に落とすんでしょうか。
それは少し考えれば理由がわかりますね。
そうしないと危険だからです。
女子48kg級の三宅裕美選手が銀メダルを取った時は、クリーン&ジャークで110kgを挙げました。
110kgのバーベルを頭の上まで挙げたんです。
それを床に落とさずに、静かに床に置けと言われたら、危険なんだと思います。
バーベルを持ち上げた状態で、ふらつかずに静止するのが困難なのに、その状態からゆっくりバーベルを下ろすというのはほとんど不可能な話なのでしょう。
だから選手の安全を考えたら落とすしかないんだと思います。
僕は体重が75kgぐらいある男ですが、頭の上に110kgのバーベルを持ち上げるなど想像もできません。
持ち上げられたとしても、それをゆっくり床に下ろせと言われたら、絶対に無理です。
だから落とすんですね。
3 ウエイトリフティングのバーベルはどこにある?
では、ウエイトリフティング用のバーベルは一体どこにあるんでしょうか?
僕はいろいろなジムに行きましたが、ウエイトリフティングの練習場があったジムはゴールドジム津田沼千葉だけでした。
あそこではウエイトリフティング用の独立した部屋がありましたが、あそこにあったバーベルはウエイトリフティング用のものだったんでしょうか。
実は、ウエイトリフティングを部活動でやっている高校、大学は少なくて、高校だと関東に15校しかありません。
千葉県だと市川昴高校、八千代西高校、松戸国際高校の三校です。
大学でウエイトリフティング部がある大学も関東で15校ぐらいで、千葉県にはありません。
部活動でウエイトリフティングをしている高校や大学にはウエイトリフティング用のバーベルがあるんでしょうか。
おそらくこれは学校によるんじゃないでしょうか。
テレビで見たんですが、ある高校では床運動用のマットを腰の高さほどにまで積み上げて、持ち上げたバーベルはそのマットの上に落としていました。
あれだけクッションが効いていれば、普通のペイントプレートのバーベルでも落として大丈夫だと思います。
でも千葉県の松戸国際高校にはかなり本格的な練習場があり、バーベルを床に落としても大丈夫な環境が整っているようです。
4 ウエイトリフティングはどこで習う?
一度ウエイトリフティングをやってみたいと思うんですが、社会人が始めるのは非常に難しいですよね。
ウエイトリフティングを教えてくれる場所はどこかにあるんでしょうか。
高校や大学の部活動ではなくて、社会人がウエイトリフティングを習いたいと思った時に、教えてくれる場所はあるんでしょうか。
調べてみたら、ないわけではないみたいですが、とても数が少ないです。
そのため、やるならば遠方まで出かけていかなければならなくなるでしょう。
そういう意味ではパワーリフティングよりハードルがかなり高いと思います。
パワーリフティングは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で、どこのジムでもやる事ができます。
ウエイトリフティングみたいに頭の上にバーベルを持ち上げる訳ではないので、危険じゃないし、コーチなしでも1人でできます。
一方でウエイトリフティングをするならば、ちゃんとした環境がないと危ないし、コーチがいないと1人ではどうにも出来ないと思います。
なので高校や大学などの部活動でやっていた人以外は、とても縁遠い競技だと思います。
5 ウエイトリフティングはなぜオリンピック種目?
ウエイトリフティングの競技人口はとても少なそうですが、なぜオリンピックの競技なのでしょうか?
ソフトボールや野球が競技から外されるならば、それより先にウエイトリフティングが外される方が自然な感じがします。
別にウエイトリフティングを敵視している訳ではなくて、単純に競技人口の数からそう思うんです。
ウエイトリフティングの競技人口は日本ではおよそ3500人だそうです。
一方、パワーリフティングの全国での競技人口は知りませんが、千葉県の競技人口は何年か前に275人と聞いた事があります。
ならばおそらく全国ではパワーリフティングの競技人口はきっと3500人は超えているでしょう。
ですが、テレビで見るならば、パワーリフティングよりも、ウエイトリフティングの方が花があるように感じます。
パワーリフティングは、スクワットやデッドリフトは見ていて面白いと思いますが、ベンチプレスは今ひとつですね。
それに比べるとウエイトリフティングは頭の上までバーベルを持ち上げて、豪快に落とすので、パワーリフティングより見ていて面白いと思います。
この辺がオリンピックに採用されている理由なんでしょうか。
ウエイトリフティングについてはまだまだわからない事だらけなので、今後も調べていこうと思います。
ありがとうございました。