パワーリフティングの試技台について

パワーリフティング

こんにちは。鹿野一郎です。
昼間、パワーリフティングの千葉県大会に出た時のことを思い出していました。
パワーリフティングはスクワット、ベンチプレス、デッドリフトの3種目で競う競技です。
バーベルでスクワットをするならばラックが必要になります。
また、ベンチプレスをするならば、ベンチプレスの台が必要になります。
通常のジムではバーベルでのスクワットはパワーラックかハーフラックでやりますよね。
ベンチプレスはベンチプレス台でやりますが、パワーラックやハーフラックでベンチプレスをする事も出来ます。
でもパワーリフティングの試合の時は、パワーラックは使いません。
その代わり、スクワット台にもベンチプレス台にもなる、便利な台を使っています。
ここではそれをコンボ台と呼ぶ事にします。

初めて試合に出てコンボ台を見た時は驚きました。
スクワットの試技がすべて終わったら、補助員の人々がどこかからベンチを持って来て、コンボ台に装着します。
そしてラックの高さを下げると、もうベンチプレスの台に変わってしまうんです。
なかなかの優れものです。

しかもそのコンボ台は、ラックにバーベルをのせたまま高さを変える事が出来ます。
僕が知る限り、バーベルをのせたままラックの高さを変えられるのはそのコンボ台だけです。
まあ、僕が知っている範囲はとても狭いんですが。

コンボ台の仕組み

ジムのパワーラックで、ラックの高さを変えようと思ったら、バーベルをラックから外さないと無理ですよね。
ハーフラックでもそうです。
でもコンボ台はテコの原理を利用して、例えラックに200kgのバーベルがのっていても、そのまま高さを上げたり下げたり出来るんです。
多くのパワーラックでは、パワーラック本体にラック部分を取り付ける仕組みになっていて、高さを変える場合は、一度ラック部分を本体から取り外して、別の高さのところに取り付ける必要があります。
でもコンボ台の場合は仕組みが違います。
ラックの高さは上下に自由に変えられるようになっていて、それをある高さで固定する時は、ラックの支柱に水平にピンを差し込みます。
そのピンで、支柱が固定される仕組みになっています。
つまり、ラック部分を本体から取り外す事なく、ピンを抜けば自由にラック部分を上下に動かせるんです。
でも、200kgものバーベルがのっていたら、あまりにも重くてピンは抜く事が出来ません。
それに、もしピンが抜けたら、200kgのバーベルごと、ラック部分は激しく下にずり落ちてしまいます。
これを避けるために、コンボ台ではピンを2本使います。
下のピンがラックの位置を固定するためのもので、上のピンはテコの原理を使ってラックを持ち上げるための物です。
コンボ台には長さが1メートルもあるような長いレバーがついていて、バーベルがのっているラックを持ち上げる時は、そのレバーの先を上のピンに引っ掛けて、レバーの根元を下に押しさげます。
レバーの長さが十分にあるので、200kgのバーベルがのっていても簡単に持ち上がります。
200kgのバーベルが乗っている場合は、片方のラックに100kgの重さがかかる事になります。
それを持ち上げるのにテコの原理を使うんですが、支点から力点(上のピン)までの距離に対して、支点から作用点(補助員がレバーを握る位置)までの距離が10倍ならば、10kgの力で挙げる事が出来ます。
実際にはレバー自体にも重さがあって重力を受けるので、補助員がレバーを押し下げるのに必要な力はもっと小さくなると思います。
そうやってラックを上に持ち上げたら、下のピンを抜いて、そのピンを新しく設定する高さの穴に差し込めばオーケーです。
あとは静かにそのピンの上にラックを下ろすだけです。
活字だとわかりにくいと思います。
おそらく動画を見てもなかなかわからないと思います。

支柱の右側にあるのが、テコの原理でラックを持ち上げるレバーです。かなり長いです。

何故この事を思い出したのかというと、試合の時に一緒にスクワットのアップをしていた選手がこのコンボ台の使い方がわからなくて、戸惑っている姿を見たからです。
その人は千葉県記録を更新するほどの強さなのに、コンボ台の使い方がわかっていませんでした。
何故かこのギャップが面白かったです。
僕も使い方を熟知している訳ではありませんが、僕の方が知っているようでした。
もちろん、手伝ってあげましたよ。
ウォームアップをする時は、お互い様です。

レバーの長さは1メートルはあると思います。レバーを水平に引き上げて、先端をピンに引っ掛けて、レバーを下げるとラックがあがります。

僕は今ではこのコンボ台を使えるようになりましたが、最初のうちは全く意味がわかりませんでした。
目の前で他の人が高さを変える様子を何度も見ていたんですが、あまりにも早くて理解が追いつきませんでした。
動作をひとつひとつ分割して、ゆっくり説明しながらやってくれたら分かったんだと思いますが、試合当日はみんな急いでいるので、てきぱきとどんどん作業をこなしていきます。
バーベルがのったままラックの高さが上に下にと自由に変えられるのは、まるで手品のようでした。

何故パワーラックを使わないのか?

パワーリフティングの試合に初めて出た時、何故パワーラックを使わないのかと疑問に思いました。
コンボ台にはセーフティーバーがありますが、そのほかに補助員がつきます。
スクワットの時は5人もつきます。
選手の真後ろに1人、左右に2人ずつつきます。
選手が立ち上がれず、潰れそうになったら、補助員が総がかりで助けるので、滅多なことでは潰れません。
初めて試合に出た時はこれが疑問でした。
パワーラックを使えば、補助員も必要ないし、その方が良いのではないかと思っていましたが、違いました。

僕が通っているジムのハーフラックです。

パワーラックを使って試合をしたら、とても長い時間がかかり、いつまで経っても試合は終わらなくなってしまうんです。
ある選手はパワーラックでスクワットをやって潰れたら、バーベルはセーフティーバーの上に置かれる事になります。
これをラックの上に戻すにはかなりの労力が必要です。
1人では絶対に無理なので、ジムでスクワットをしていて潰れた場合は、一度プレートを全部外して、シャフトだけにしなければなりません。
そしてシャフトをラックに戻してから、またプレートをつけます。
とても時間がかかるし、手間も嫌なので、なるべくスクワットでは潰れたくありません。

試合会場でこんなに時間のかかる事をやってられないので、補助員が5人もつくんですね。
5人もの補助員をつける理由は、バーベルをセーフティーバーの上に落とさず、必ずラックに戻させるためだと思います。
選手が潰れても補助員が助けてバーベルが必ずラックに戻るならば、無駄な時間を使わないで済みます。
試合を円滑に進めるためには補助員の協力は不可欠という事ですね。
パワーラックを使ったら5人の補助員が補助しにくいので、コンボ台を使うという事だと思います。
それと、コンボ台はバーベルを載せたまま高さを変える事ができるので、身長の異なる選手が次々に試技を行う試技台としては、コンボ台がベストなんでしょう。

自宅にコンボ台があったら便利なのか?

僕は一時期、このコンボ台を家に欲しいと思っていました。
普通にハーフラックを買うよりも、このコンボ台の方が優れていると思ったからです。
機能も優れているし、パワーラックより高さがないし、軽いです。
でもすぐにこのコンボ台は家庭用には向かない事がわかりました。
理由は、とても値段が高い事、とても場所を取る事、自宅ではバーベルを乗せたまま高さを変える必要がない事です。

BULLのコンボ台(試合で使ったコンボ台)の値段はおそらく50万円ぐらいすると思います。
パワーテックのハーフラック(WB-HR19)が9万円で買える事を考えると恐ろしく高いです。
それと、このコンボ台はものすごく場所をとります。
普通のパワーラックやハーフラックならば壁にぴったりつけて使う事が出来ますが、このコンボ台はテコの原理を利用してラックの高さを変えます。
そのためレバーの長さは1メートルぐらいあります。
高さを変える時は、ラックの支柱に平行に取り付けてあるレバーを外して、一度水平になるまで持ち上げて、それを下に押しさげてラック部分を持ち上げます。
この作業のために、コンボ台を壁にぴったりつけるのは無理なんです。
不自由なく作業できるためには、コンボ台から壁までは1.2m以上は空けておいた方が良いのではないかと思います。
そうなると余程広い部屋でないとコンボ台は置けない事になってしまいます。

僕が欲しいハーフラックです。

最後に、このコンボ台の最大のメリットは、バーベルを載せたまま高さを変えられる事にありますが、これは自宅で使う分にはそれほど大きなメリットにはならないと思います。
例えばスクワットが終わって、次にベンチプレスをする場合や、逆にベンチプレスが終わって次にスクワットをする場合は、バーベルの載せたまま高さが変えられるのは便利ですが、それ以外の時は、必要ない機能です。
自分の身長は決まっているので、ベンチプレスをやっている最中やスクワットをやっている最中に高さを変える必要はないですよね。
試合の時のように次々に体格の違う選手が出て来て試技をする場合には効果絶大ですが、家庭で個人で使う分にはあまり大きなメリットではないんです。
なので、総合的に考えてメリットよりもデメリットの方が大きいという事になりました。

家庭用の安いコンボ台、理想的なハーフラック

インターネットで調べてみると、家庭用のスクワット台がたくさんあります。
一時期、そういう物を買おうかと考えた時期もありましたが、強度の面で不安があることがわかったので、買うならちゃんとしたハーフラックだと思うようになりました。
写真だけをみるとベンチプレスにもスクワットにも使えそうに見えるものが多くありますが、レビューを見ると、スクワットをする時に足場の水平なフレームが邪魔で、やりにくい、出来ないというものが多かったりします。
また、レビューだと使用重量が100kg程度までのものが多いです。
180kgとか200kgのバーベルで一発勝負のスクワットをするとなると、やっぱり強度の面でとても不安です。
実際に自分で使ってみたわけではないので、勝手に想像で悪い事を書くことは出来ませんが、ある程度の強度でスクワットをするならば、ちゃんとしたラックを買った方がよいと思います。
僕はパワーテックのWB-HR19というハーフラックが欲しいですが、実はこれは僕の体には大きすぎます。
高さが208cmあって、上に懸垂バーがついているので、自宅で懸垂が出来るようになるのは良いんですが、208cmというのは身長164cmの僕には高すぎます。
手を伸ばしても届かないです。
懸垂をする時に膝を折りたたむようにすれば、懸垂バーの高さは180cmでも十分だと思います。
そのぐらい背の低いハーフラックがあったら、家にも置きやすくなると思います。
メーカーによっては特別注文で高さの低いラックを頼めるところもありますが、そうなるとやっぱり値段が高くなってしまいます。
日本人の(僕の)身長に合わせた、低いハーフラックが作られるようになる事を願っています。

パワーテックのハーフラックは、セーフティーバーが18cmしかなくて短いという欠点を抱えていましたが、それが改善されて、今は27cmあります。
それならば、高さが208cmもあって家に置きにくいという欠点を改良して高さが180cmぐらいの小さいラックを作って欲しいです。
そうすれば重さももっと軽くなるし、値段ももっと安くなるでしょう。

パワーテックのパワーラックです。ジョイフル本田、千葉ニュータウン店に展示してありました。

ホームセンターなどではたまに懸垂台が置いてありますが、あれはグラグラしてしまって、非常にやりにくいです。
やっぱり懸垂をする時は、懸垂バーは安定していて欲しいです。
僕はパワーテックのハーフラックは実物を見た事がないですが、インターネットのレビューでは、懸垂の時の安定感は抜群だそうです。
ちなみにパワーテックのパワーラックならば実物を見た事があります。
そして懸垂をした事もあります。
何故なのか、パワーラックで懸垂をした時は、ぐらつきを感じました。
パワーラックよりもハーフラックの方が安定しているのでしょうか。
横から見ると、パワーラックは四角形で、ハーフラックは三角形なので、ハーフラックの方が安定しているのかも知れないです。
もしパワーラックをもっと安定させようと思ったら、筋かいを入れると良いですが、そうなると重くなるし、値段も高くなってしまうんですよね。きっと。

近未来のコンボ台

試合で使うコンボ台は、バーベルをのせたままラックの高さを自由に変えられるのが大きなメリットです。
でもバーベルをセーフティーバーの上に落としてしまったら、人力でラックに戻すしかありません。
もしかしたら近未来には、セーフティーバーに落ちたバーベルをテコの原理などで簡単にラックの戻せるスーパーコンボ台が登場するかも知れません。
フォークリフトのような電動式にすれば簡単に作れると思いますが、そうなると今度はコンボ台自体が重くて持ち運びしにくくなるので、やっぱりテコの原理を使うのが良いのでしょう。
どうやったら可能になるのかはちょっとわかりませんが、不可能ではないような気がします。
もし電動にして、コンボ台自体が重くなった場合は、コンボ台を自走式にして自力でセットアップ出来るようになると良いでしょう。
もちろん冗談で書いていますが、車のトランクから地面まで板を斜めに置いたら、自走して車から降り、競技場に入っていき、指定された場所に座り込むようにしたら、便利ですね。
試技とウォームアップで3台必要だとしても、全部自分でセットアップしてくれるならとても楽です。
でも何かそれだとパワーリフティングっぽくないですね。

昔のボウリング場はどうだったんでしょうか。
僕は昭和42年生まれですが、初めてボウリング場に行った時は、もう今のようにピンは機械が自動で並べるようになっていました。
当時はまだスコアはプレーヤーが紙と鉛筆で自分で書いていましたが、ピンはすでに自動化されていました。
もし大昔のボウリングが、人がピンを並べるものだったとするならば、ピンを自動で並べる機械が導入された時に人々はどう思ったんでしょうか?
やっぱり、便利になって感激したんじゃないでしょうか?
これじゃあ、ボウリングじゃないという意見はなかなか出ないような気がします。
でもパワーリフティングのコンボ台が電動化されてしまって、補助員も必要なくなってしまったら、何かパワーリフティングではないような気がしてしまいます。
この違いは何なのでしょうか。

選手、補助要員、審判

パワーリフティングでは選手をしながら補助要員をする人が大勢います。
というより補助要員は全員選手なんだと思います。
選手だけど、次の試合は出ないという場合に、補助員として参加するんだと思います。
僕は一度も補助員をした事はありませんが、補助員をすると友達を作りやすいなと思いました。
僕はパワーリフティングでは、一応チームに所属していますが、新型コロナウィルスのためか、この2年間はチームで試合に出ているのは僕だけです。
チームの合同練習会も親睦会もすべて中止になってしまって、試合でも1人なので、寂しい限りです。
試合会場には若い選手が多いので、僕のようなマスターズの選手は、マスターズ同士でつるむ事になります。
僕が試合会場で最もよく話す人は69歳です。
でもその方は僕よりベンチプレスが強いです。
僕ももっと強くなりたいです。

そのように考えると、補助要員をやるとチームの柵を超えて多くの友達を作る事ができると思います。
今は可能な限り、選手として出場していますが、もしかしたらいつか僕も補助要員をするようになるかも知れないです。

選手の中には、審判までやる人もいます。
審判は誰でも出来るわけではなく、講習を受けなければなりません。
審判にも階級があって、副審を務めるのと主審を務めるのでは、必要とされる知識や経験が異なると思います。
審判向けの講習があるのは知っていますが、試験があるのかどうかはわからないです。
もし、実技試験や筆記試験があるとしたら、なかなかハードルが高いですね。
多くの審判は、現役を引退してから審判になるんだと思いますが、たまに現役の選手をしながら審判をする人もいます。
すごい情熱だと思います。

今回はこんなところです。
ありがとうございました。

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