今回の投稿は、バーベルブログで過去最高の長文だと思います。
こんにちは、鹿野一郎です。
中学1年生の娘が、目の整形手術をしたいと言い出して、我が家は大混乱しました。
一重のまぶたを整形して二重にしたいのだそうです。
娘は6年生のある日、アイプチというものを始めました。
僕は当時、何の事かわかりませんでした。
娘の目が変な感じになっているのに気がついて、「その目はどうした?」と聞きました。
ものもらいでも出来たのかと思ったら、アイプチというものを使って、一時的に一重まぶたを二重に矯正していたようです。
ノリのようなもので、まぶたをくっつけて二重を作るんだそうです。
だから、大汗をかいたり、顔を洗ったりすると、元に戻ります。
今はそういう商品が100円ショップでも売っているそうです。
妻によると、妻が中学生、高校生だった頃にもそういう商品はあったそうです。
でも当時は100円ショップなんかなかったし、今みたいにドラッグストアもなかったし、コンビニもずっと少なかったです。
どこで売っていたのかというと、雑誌などの後の方に怪しげな広告が入っていて、通信販売で売っていたそうです。
当然、妻は買った事がないですし、友達でもそんな物を使っていた人はいなかったと言います。
確かに、雑誌の巻末に怪しげな広告は入っていましたね。
背が伸びる薬とか、痩せる薬というようなものを通信販売で売っていました。
僕も買った事はないですが。
娘は最初のうちはアイプチで満足していたようです。
整形手術はダサいからやらないと言っていました。
それが、次第に変わって来たようです。
娘が、相談があると言い出しました。
娘が中学校に入学したばかりのある日、僕に相談があるから、今度時間がある時に話を聞いて欲しいと言ってきました。
言葉ではなく、手紙でそう伝えてきました。
手紙に書いてありましたが、ママにも相談しようと思ったけど、馬鹿にして笑われると思うから、パパに相談するんだそうです。
パパやママからすれば、笑って終わりの話かも知れないけれど、自分にとってはとても重要な事なので、パパも真剣に考えて欲しいと書いてあります。
でも、いじめられているとか、そういうのじゃないから心配はしないでと書いてありました。
娘はその手紙を僕の書斎に持ってきました。
確かゴールデンウィーク前の月曜日だったと思います。
僕も仕事があるので、「時間があるのは土曜日だ、土曜日まで待てるか?」と尋ねました。
娘は土曜日で良いというので、土曜日に話を聞く事になりました。
目の整形手術をして、一重を二重に治したいそうです。
次の日、つまり火曜日に、娘はまた僕のところに手紙を持ってきました。
今度は小さな字で、紙の表と裏にびっしりと書いてあります。
初めは言葉で自分の考えを伝えようと思ったそうですが、うまくまとめられそうにないから、手紙にまとめたと言います。
その手紙は今でも僕の机の中にありますが、全文を引用するのはさすがに悪いので、要点だけをまとめます。
娘は目の整形手術をして、一重まぶたを二重に治したいそうです。
お金は20万円ぐらいかかるそうです。
大人になったら働いて返すから、そのお金を出して手術に同意して欲しいという内容でした。
自分はこれまで家の手伝いも何もしてこなかったから、これからは夕飯の準備も、犬の散歩もちゃんとやるようにする、お風呂の準備もちゃんとするとまで書いてあります。
他にパパとママに言われた事なら何でもするからお願いしますとまで書いてありました。
今までにもらったお年玉が結構溜まっているけれど、それは結局もらったお金で、自分で稼いだお金ではないから、大人になってからちゃんと働いてお金は返すと言います。
これから暑くなって汗をかくようになると、アイプチが取れて一重がバレてしまうかも知れない。
そうなったら友達から馬鹿にされるかも知れない。
夏になってプールに入るようになったら完全にバレる。
だからその前に整形手術をして二重になりたいというんです。
僕は手紙を何度も読み返し、困った事になったと思いました。
問題点は、まぶたが一重である事ではなく、娘がそれをコンプレックスに感じている事です。
アイプチがバレると馬鹿にされるから整形するというのは、どうも論理の飛躍が過ぎると思います。
それに、6年生の時にアイプチを始めた時はどうだったのでしょうか?
アイプチをして二重にしている事を周りの友達から馬鹿にされたのでしょうか?
もしそうでないなら、なんでアイプチがバレた時だけ馬鹿にされると思うんでしょうか?
それと、20万円ものお金を、将来働いて返すからと簡単にいうのは良くない事だと思います。
まだ中学1年生ですから、娘は借金の恐ろしさを知りません。
僕は学生時代に借金の恐ろしさを身をもって経験しました。
全て自分の責任なんですが、深く考えず何でもかんでもローンを組んで、車を買い、バイクを買い、オーディオセットを買い、40インチのテレビを買い、ビデオデッキを買い、レーザーディスクのデッキまで買って、気づけが月々の支払いは16万円に達していました。
大学生だった僕にとっては地獄の返済でした。
働いても働いても、稼いだお金は僕の手元に残らずに消えていきます。
それだけでなく、友達にも方々に借金をしていました。
麻雀の負け分とか、ビリヤードの負け分とか、無一文なのに友達と一緒にスキーに行ったりして、借金は雪だるまのように膨れていきました。
なんとか社会人になる前に全部返済したいと思いましたが、結局それは無理でした。
予備校講師になって、半年ほどで全て精算が終わりました。
僕が借金を完済したとき、友達はみんな驚いていました。
あり得ない事が起こったというような驚き方でした。
一重のまぶたを二重にするために20万円も払うのか?
しかも、夕飯の手伝いや犬の散歩、お風呂の準備をするだけでなく、僕や妻に言われた事は何でもすると書いてあります。
いつまでそれを続けるとは書いてありませんでした。
一体、どういうつもりなのでしょうか?
借金を返済するまで続けるつもりなんでしょうか?
もしそういうつもりで言っているとしても、あまりにも自分に不利な約束だと思います。
借金を全額返すのに、家の手伝い全般と、親から言われた事を向こう10年にわたってやり続けるんでしょうか?
ちょっと冷静さが足りないと思います。
冷静な判断が出来ないぐらいに、強迫観念に駆られているのでしょう。
友達に一重だとバレるのがそこまで怖い事になってしまっているようです。
僕は小学生の頃、逆さまつ毛を治すために、目の手術を経験しています。
実は僕は小学生の頃に、目の手術をしています。
幼稚園の頃、僕はひどい逆さまつ毛で、明るいところに出ると涙が止まらない子供でした。
だから外で遊ぶのは嫌いだったし、いつも薄暗いところにいました。
明るいところが大嫌いだったんです。
母はそんな僕の事を心配しましたが、原因は逆さまつ毛という病気だとわかりました。
まつ毛は普通は外に向かって生えていますが、たまに眼球に向かって生えている人がいます。
まつ毛が眼球を刺激し、常に目が痒い感じになるんです。
どうして明るいところに出ると涙が出るのかはわかりませんが、結構辛い症状でした。
それを治すために、手術をして一重まぶたを二重に矯正すると言います。
僕は当時小学校1年生でした。
目を切ると聞かされて泣き叫びたい気持ちになりました。
そんな事は絶対にしたくない。
そんな目に遭うぐらいなら、一生このままでも良いと思いました。
でも、僕の意志に関係なく、手術をする事が決まってしまいました。
手術の前日は風の強い日でした。
僕は家の縁側から庭の激しく揺れる木々を見ながら、自分の運命を呪っていました。
明日の今頃は僕は手術台に寝かされて、目を斬られるんだと思うと、どこか違う世界に逃げ出したい気持ちになります。
母は、手術に耐えたら自動車のプラモデルを買ってくれると言います。
当時の僕にはそれは大変なご褒美でした。
でもプラモデルはいらないから手術はやめて欲しかったです。
手術の話は長くなるので省略します。
手術の後は、眼帯をして家に帰りました。
全身汗でびしょびしょでした。
眼帯は1週間ぐらいで取れたでしょうか?
眼帯を外してみると、まぶたが大きく腫れています。
母はとても心配して、先生に大丈夫でしょうかと尋ねましたが、1ヶ月ぐらいで元に戻るという話でした。
次は反対の目です。
また手術です。
同じように、手術の後は1週間ほど眼帯をしていました。
そして眼帯が取れてから1ヶ月ほど、まぶたは大きく腫れていました。
それでさかさまつ毛は治ったのか?
手術の後はとても目が痒くなります。
ずっと目をこすっていたら、二重に矯正したまぶたがまた一重に戻ってしまいました。
右も左も元に戻ってしまいました。
これには母も先生も驚きました。
余程ひどいこすり方をしない限りこうはならないと言っていました。
では、どうするのかと思ったら、また手術をするというんです。
僕は地獄に突き落とされました。
そしてまた手術です。
もう3回目ともなれば慣れたもんです。
恐怖もなく、痛みにも慣れていました。
左右の目のどっちを先に手術したかは覚えていませんが、片方をやって、もう片方をやるまでの期間は半月ぐらいでしょうか?
いや、もっと長かったような気もします。
それで、今度こそ逆さまつ毛は治ったのでしょうか?
違いました。
またしても目が痒くて痒くて、掻き続けました。
目を触るなと言われても痒くて無理なんです。
結局、右も左も元の一重に戻ってしまい、明るいところに出ると涙がポロポロ出るようになりました。
母はかなり困惑したと思います。
今後どうなるのかと思ったら、まさかの3回目の手術です。
(正確には5回目と6回目の手術です。)
またやるのか?
もしかしたら一生目の手術を受け続けるのか?
もう嫌だよ。
本当にそう思いました。
とうとう3回目の手術です。
右と左をやりました。
一連の手術で僕は自動車のプラモデルを6台ゲットしました。
3回目の手術が終わった後も、目は痒くて仕方なかったです。
我慢できるはずがないので、掻き続けました。
ですが、今回は大丈夫でした。
左目は54歳になった今でも二重のままです。
右目はこすり続けて、奥二重になりました。
でも、明るい所に出ても涙は出なくなり、いつの間にか目をこする癖も治っていました。
以前は薄暗いところが大好きでしたが、暗いところは大嫌いになり、外で走り回る子供になりました。
一連の手術にはとても長い時間がかかりました。
最初の手術の時は1年生でしたが、最後の手術の時には4年生になっていました。
今思い出しても、あれは僕の少年時代最大の試練でした。
あんな思いをして、病気でもないのに一重を二重にしたいのか?
しかも親に20万円も借金をして?
さらに向こう10年間、家の手伝いや、親に言われた事は何でもするというのか?
いくらなんでも釣り合わないです。
娘自身が真剣に考えていないとしか思えませんでした。
埋没法と切開法
とは言うものの、僕自身が最近の目の整形について何も調べず、何も知らないまま、娘の言い分を全て否定するのも良くないと思い、目の整形について調べてみました。
インターネットで調べると、いくらでも洪水のように情報が出てきますが、そのほとんどは手術を実施する病院側が作ったサイトです。
それだと手術の良い面ばかり宣伝している訳で、負の側面や知っておいた方が良い注意点を知る事が出来ないと思いました。
実際に一重を二重にする手術を受けた人の口コミのサイトはないだろうかと探してみると、なんと手術の様子をブログで公開している人が何人かいました。
当然、顔出しのブログになります。
ブログにはかなりたくさんの写真も掲載されていて、手術の様子が手に取るようによくわかります。
いろいろ調べていくと、二重手術には大きく分けて、埋没法と切開法というのがある事がわかりました。
埋没法というのは簡易的なもので、メスは使いません。
針と糸で行う手術で、アイプチがノリでまぶたを固定するのと同じように、糸でまぶたを固定します。
2点止め、3点止めなどがあり、当然止める箇所が多くなると値段があがります。
埋没法は、糸が切れたらまぶたは元に戻ります。
なので、経年劣化で、数年で元に戻る事もあるそうです。
逆に、目の好みが変わって来たら、抜糸して元に戻し、新たに違う目にデザインする事も出来ると言います。
それに対して切開法は、メスを使う本物の手術です。
埋没法と違って経年劣化で元に戻ることはありません。
手術後に気持ちが変わって、元に戻したいと言っても、もう元には戻りません。
(昔の僕のように掻き続ければ元に戻るかも知れないですが)
費用は埋没法の方が安く、切開法の方が高いです。
保険が適用できないので、どちらもとても高いようです。
埋没法だと5万円から出来ると宣伝している病院もありましたが、5万円からの「から」が実に怪しいです。
いろいろ調べてみると、現実問題として、埋没法だと20万円以上、切開法だと45万円以上かかるようです。
二重手術をした、ある女性が書いているブログには、両目で70万円かかったと書いてありました。
90万円のところを20万円も割引してもらえてラッキーだったそうです。
目の手術に70万円もつぎ込むというのは、僕には理解できない感覚です。
僕は中学の頃は、背が低いこと、太っている事が嫌でしたが、70万円で背が10cm伸びると言われても、完全にスルーすると思います。
70万円払えば10kg痩せると言われても同じです。
減量なら自分でします。
調べてみて、美容整形の相場というのは、実に曖昧だと思いました。
病院によってものすごく料金に幅があります。
あれだと、どこの病院が良いのか、ものすごく迷うと思います。
娘になんて話そうかと考えた時、まず切開法は絶対反対でした。
埋没法なら考えなくもないです。
でも、周囲にバレずに整形手術をする事なんて可能なんでしょうか?
僕は手術後に1週間眼帯をしていたので、手術をしたことは周りのすべての人が知っていました。
でも、それは45年も前の話で、今は眼帯なんかしないそうです。
両目を同じ日に手術して、眼帯もつけずに帰れるそうです。
しかも手術時間は15分程度だそうです。
手術の痛みも大したことはなく、僕が読んだ女性のブログでは、鼻毛を抜くぐらいの痛みしかなかったそうです。
やはり45年の技術革新はすごいですね。
もし、昔の僕のように、逆さまつ毛で、いつも暗いところにいる小さい子供がいたとしても、昔僕が経験したような恐怖と痛みを乗り越える必要はないんですね。
僕の時は手術時間は1時間以上かかりましたが、今は15分です。
昔は1週間眼帯をしましたが、今は不必要です。
素晴らしい医療技術の進歩だと思います。
でも、それを美容整形に利用するというのはどうなんでしょうか?
娘はアイプチがバレたら馬鹿にされるかも知れないと恐れていますが、手術をしたらバレると思います。
手術がバレた時のからかわれ方は、アイプチがバレた時のものとは桁が違うと思います。
そっちの方がはるかに恐ろしいと思います。
今の技術を持ってしても、手術の後はやっぱりちょっと目が腫れたり傷が目立ったりするそうです。
それが元に回復するまでの時間をダウンタイムと言います。
埋没法だとダウンタイムは1週間ぐらいで、切開法だと数週間は必要になるようです。
もしどうしても埋没法で手術をするならば、夏休みとかゴールデンウィークが良いでしょう。
学校が休みになるからです。
塾はゴールデンウィークは休みになりますが、部活はあるでしょう。
夏休みは塾も部活もあるでしょう。
そう考えると、周囲にバレずに整形手術をするのは無理なように思えました。
アイプチがバレるのが怖いというけれど、整形手術をすればほぼ確実にばれるし、バレたらアイプチの比でないほど人々から色々言われるでしょう。
どう考えても手術をしない方が得だと思います。
土曜日、娘と話し合いをしました。
土曜日、妻が買い物に出かけたのを確認してから二階のぼくの書斎で娘と話をしました。
埋没法と切開法のどっちをしたいのかと尋ねたら、切開法をやりたいと言います。
ちゃんとそこまで調べてあったのかと思いました。
切開法は元に戻せないと説明しましたが、元に戻らないから良いと言います。
中学生の今はそう思うかも知れないけど、今後、高校、大学と上がるにつれてどんどん考え方が変わるので、リセットできる方が良いだろうと話し、次第に娘は埋没法の方が良いと思うようになって行きました。
埋没法ならやらせてくれるの?と問われたので、僕はさらに質問しました。
家の手伝いや、パパやママに言われたことを何でもすると手紙に書いてあったけど、いつまでそれを続けるつもりなんだと聞くと、しばらく考えていました。
そして、大学を卒業するまでという返事が返って来ました。
浪人も留年もしなかったとして、あと10年です。
そんなに長い間、まぶたのために働けるのでしょうか?
僕は二重整形をした女性のブログを娘に見せました。
娘はそれは見た事がなかったようで、ブログの画像をまじまじと見ていました。
果たしてどのくらいの傷がつくのか?
ブログの画像だけでなく、本物の傷も見せてやろうと思いました。
僕のまぶたです。
僕は指で自分のまぶたを閉じて、娘に近寄って見るように言いました。
「パパの目は、切開法を3回やった目だ。傷跡がわかるか」と尋ねると、しばらくしてから、よく見るとかすかに傷があるのがわかると言いました。
パッと見た限りではわからないようです。
しかもこんな至近距離からまぶたを覗くなんて、恋人ぐらいしかいないでしょう。
なので、娘には、「そんな傷なら恋人にしか見えないじゃないか。」と言いました。
すると娘は、「でも恋人にはバレる。」と言いました。
僕は笑いながら、「何を言っているんだ。恋人にだったら、最初に実は私整形してるのと自分から話すんじゃないのか?」と言いました。
その後も色々話して、手術はどうせ周りにバレる事、バレたらアイプチの比ではないぐらいに馬鹿にされる事を説明し、それでも毅然としていられるなら、埋没法に限ってパパは応援すると答えました。
娘は喜んで、夜にママも入れて3人で話し合いたいと言いました。
娘は夕方からトランポリン教室に行き、その後はそのまま塾に行きます。
娘が塾に行っている間にパパからママに話をしておくと伝え、娘からもらった手紙もママに見せるけど、いいか?と尋ねました。
娘はあっさり了解しました。
娘をトランポリン教室に送る車の中で、次のように言いました。
「整形手術は孤独なんじゃないのかな?仲の良い友達にも整形のことが言えないかも知れないじゃないか。」
次のようにも言いました。
「もしクラスの女子の間で芸能人の整形手術が話題に上り、ブスのくせに無駄な努力をして馬鹿みたいなんていう流れになったら、すごく嫌なんじゃないか?」とも聞きましたが、それは大丈夫だと言います。
本当なんでしょうか?
アイプチがバレるのが怖いというのに、本当に大丈夫なんでしょうか?
妻の猛反対
家に戻ると、妻が待ち構えていて、娘とどんな話をしたのか聞きたがります。
僕は書斎に手紙を取りに行き、妻に見せました。
そして、昼間の娘との話をすべて妻に話しました。
結論として、条件付きで埋没法を認めるというと、妻は猛烈に反対しました。
中学1年の娘が二重になりたいというだけで20万円も払って整形手術をするなんて馬鹿げている、どうしてそんなことを認めるのか?ダメに決まっているという調子です。
妻の言い分は以下の通りです。
人の顔はどんどん変わっていくし、娘の小学1年生の時の友達だって、この間の卒業式で見てもわからなかった。
どんどん変わっていくし、そのうち自分の顔に関する関心なんかなくなっていく。
私だって中学の頃は自分の顔が嫌だったけど、そんなのは一時的な物で、すぐに気にならなくなる。
二重にしたいなんて思うのは今だけだ。
そんなことに20万円ものお金を建て替えたら、今後娘はどんな事にも我慢ができないダメな人間になっていく。
どうしてそれがわからないのか?
妻の言う事は全部正しいと思います。
でも、娘がどうしても二重になりたいと思っているのも事実だし、ゼロ回答は避けたいとも思っていました。
妻とはかなり長時間話し合うことになりました。
娘は塾におよそ3時間行っていましたが、その間ずっと妻と話し合っていました。
僕はその時間で、バーベルブログの記事を書きたかったんですが、その時間はなくなりました。
どこまでも平行線の押し問答が続くのかと思いましたが、とうとう妻は泣き出してしまいました。
「まだ12歳の自分の娘が、しかも決してブスじゃないし、むしろ我が子は可愛いと思っているのに、なのに整形手術をしたいと言い出すなんて、私はそんなのは絶対に嫌だ。」
目の前で泣いている妻に、僕はもうそれ以上何も言えませんでした。
確かにその通りです。
例えば、目と目が異常に離れていて人々に馬鹿にされていて、学校にも行けなくなってしまったから手術で治したいとか、唇が明太子のように腫れ上がっていて馬鹿にされて学校に行けなくなってしまったから手術で治して、さらに転校したいとか、そういう事なら話は別ですが、アイプチがバレるのが嫌だから二重手術を受けたいというのは確かに母親からしたらショックな話でしょう。
娘には悪いですが、今回は妻の言い分に従う事にしました。
娘を迎えに行った車内で今回は諦めるように話しました。
時間が来て、僕は1人で娘を迎えに行きました。
車に乗り込んだ娘は真っ先に、どうなったかを聞きました。
僕は、今回はあきらめろと言いました。
娘は絶句した後で、理由を尋ねます。
僕は最後に妻が言ったセリフをそのまま娘に伝え、ママが正しいと思うと言いました。
すると娘はしくしく泣き始めました。
何も反論せずに、ただ泣いています。
家についても車から出ようとしません。
僕は車の外で娘が出てくるのを待っていましたが、全く出てくる様子がありません。
それよりも、車外にいるのにはっきりと聞こえる娘の泣き声がとても辛かったです。
かなり激しく泣いていました。
5分経過したか、7分経過したか?
随分と時間が経過したあと、娘はドアを開けて、いつまでそこにいるのかと尋ねます。
娘が出てくるまでここにいるつもりだと言うと、気持ちを整理したら家に入るから、先に入って欲しいと言われました。
家に入ると、妻が尋ねます。
何で家に入ってくるのにこんなに時間がかかったの?娘はどこにいるの?
車の中で泣いていると伝えると、あらまあ、という反応でした。
娘が家に入って来たのはそれからさらに15分が経過してからでした。
まっすぐに部屋に引っ込んでそのまま寝るものと思っていたら、予想外なことに、3人で話し合いたいと言います。
もう泣いていませんでした。
この時の娘には、僕は感動しました。
今までだったら癇癪を起こして暴れて終わりだったところですが、冷静に話し合い、妻を説得するつもりのようでした。
娘がものすごく成長したような感じがしました。
深夜に及んだ3人での話し合い
3人でテーブルにつくと、娘より先に妻が話し始めました。
思春期の女の子の気持ちはどんどん変わっていくから、今は二重にしたいと思っても、やがてそんな事は気にならなくなる。
そもそも顔もどんどん変わっていくから、今の時点でどうこう言っても仕方ない。
そういう話が続きました。
我慢を覚える事も大切だ。
何でもかんでも親に頼めば聞いてもらえると思うのは甘い。
お金を出してくれたら家の手伝いをするんじゃなくて、普段からちゃんと手伝いをする子なら、少しは考えない事もない。
普段何もしないのに、お金を出してくれたら全部やりますなんていう口約束は信用できない、と諭します。
娘は全く折れません。
娘は、埋没法ならいずれ元に戻るんだから良いじゃないかと主張します。
自分だって5年先、10年先に二重にこだわっているかどうかはわからない、でも今はどうしても二重にしたいんだ、だから元に戻せる埋没法で二重を手に入れたいんだと言います。
妻と娘の攻防は一進一退でした。
でも話を聞いていると2人の言い分が少しずれている事がわかって来ました。
妻は、長期的に見て、手術はするべきでないと言っていて、娘は今だけ二重になりたいんだと言っています。
娘がかなりイライラしているのがわかったので、僕は間に割って入り、「ママの言い分はわかるけど、ずれてるよ。トンボ(娘)は5年後とか10年後の話なんか全くしていなくて、今この瞬間だけ二重になりたいと言っているんだよ。」と言いました。
娘は「そうだ。そうだ。ママはずれてるよ。」と応じます。
僕はこの時、頭にあるアイデアが閃きました。
娘がどうして二重にしたいのか、その本当の理由がわかったような気がしました。
そして、娘に次のように言いました。
「パパはトンボがどうして二重の手術をしたいのか、その本当の理由がわかったと思う。これからそれをママに話すから、自分の部屋に行っていなさい。」
すると、娘は、ここで話せば良いじゃんと言います。
「トンボにとっては聞きたくない話だと思うよ。」と言っても、構わないと言います。
なので、僕は妻の方に向き直って次のように言いました。
「トンボには今好きな人がいるんだよ。その好きな人が、女の子は二重がかわいいと言ったんだろう。だから今だけでいいから二重になりたいと思っているんだろう。」
そう考えると合点が行きます。
昼間、娘と話したとき娘は、「でも恋人にはバレる」と言いました。
好きな人がいて、その好きな人は二重を好んでいるので、自分の二重はアイプチで、バレるのが怖いと思っているんでしょう。
妻は僕の話を聞くと、娘に、「そうなの?」と尋ねました。
すると、驚いた事に娘はそれを事実だと認めました。
この瞬間、話し合いの雰囲気はガラリと変わりました。
娘は別に自分の外見に強いコンプレックスを持っている訳ではなかったんです。
好きな男の子に自分の二重が偽物だとバレるのが嫌だったんです。
そういう事なら話の重さは全然違います。
一気に深刻な雰囲気は消し飛びました。
世の男は女の人の事をほとんど見ていない
僕は娘に話しました。
そのセリフを言った男の子は、もしかしたらもう自分が言ったセリフを覚えていないかも知れないよ、と。
「え?オレそんなこと言ったっけ?」というのは男がよく使う言葉です。
しかも、目の前の女の子が一重か二重かなんて、いちいち見ていないし、わかりゃしないと思います。
娘のアイプチが取れて一重に戻ったとしても、なんか目が少し違う感じがするな?ものもらいかな?ぐらいにしか感じないでしょう。
現に僕は娘がアイプチを始めた時にそうとしか感じなかったんですから。
僕はどんどん続けます。
例えばデートの時に、女の子が新しいイヤリングをつけて行って、それを彼氏に褒めてもらいたいと思っていても、ほとんどの男は気づきもしない。
だから男は怒られるんだと話します。
そもそもイヤリングをしているかどうかすらわかっていない可能性もあります。
僕は普段妻と話をしていて、妻が化粧しているのか、すっぴんなのかすらわかりません。
前にタレントの磯野貴理子がテレビで話していた話を娘に聞かせました。
合コンなどをしていて、女性がお化粧を直して来ますと言ってトイレに行って戻って来ても、男達はどこがどう直ったかなんてまるでわかっていない。
口紅を塗り直しても、髪型を整えてもまるで気づかない、一体あなた達は何を見ているのと聞いてみたことがあるのよ、と言います。
すると若い男性たちは、箸の持ち方、お皿の取り分け方などを見ていると答えたそうです。
それを聞いて磯野貴理子は化粧なんて無駄なんじゃない!と言っていました。
この話はとてもよくわかります。
僕が妻と出会って、初めて2人で食事に行った時に、僕が最も注目したのは、妻の箸の持ち方でした。
着ている服とか、持っているバッグとか、履いている靴なんかには全く関心はありませんでした。
もう一つエピソードがあります。
僕は予備校講師をしていますが、以前勤めていた予備校には、大学生による質問コーナーというのがありました。
生徒が自由になんでも質問できるようにアルバイトの大学生が待機しているんです。
学生ごとに英語担当、数学・物理担当などと分かれていました。
ある年、質問コーナーの学生が全員僕の教え子だったことがあります。
3年生のA君、2年生のB君、1年生のCさんとは特に気があって、よく飲みに行ったり、カラオケに行ったりしていました。
ある日、3人がうちに遊びに来ることになったので、僕は特上寿司を注文して待っていました。
僕はまだ独身でした。
テーブルの上にはお皿を積んでおき、しょうゆやわさびも用意しておきました。
皆で席に着くと、Cさんがさっとお皿を手に取り、まず僕の前に置き、次にA君の前に起き、次にB君の前に置きました。
最後に自分の前にお皿を置くと、今度は、僕、A君、B君、Cさんの順に醤油をおさらに垂らしていきました。
僕はそれを見て感動してしまい、なんてよく出来た子なんだろうか!と驚いたものでした。
後日、A君、B君とその話をしたら、2人も同じように感じていたそうです。
とても感動したと話していました。
月日が流れて、なんとA君とCさんが結婚することになりました。
僕も披露宴に呼ばれたので、目白の雅叙園まで出かけていきました。
友人代表のスピーチはB君で、なんとそのときのお皿としょうゆのエピソードを披露しました!
B君は、その時、Cさんの振る舞いに痛く感動し、嫁にもらうならこういう子が良いと思ったけど、Aさんに持っていかれましたと言って会場の笑いを取っていました。
好きな人が二重の女の子が可愛いと言ったから、自分の二重が偽物だとバレるのが怖い。
まさに思春期の女の子ですね。
羨ましい感じもします。
僕の年になるともう、そういう悩みやときめきはないですからね。
プレイボーイはモテるけど、女を泣かす?
女の子のまぶたが一重か二重か?
口紅の色を変えたらすぐに気づくのか?
女の子の気持ちをいつも先取りして理解し、女の子を快適にさせてあげられるのか?
僕には全部無理です。
世の中の多くの男性にとっても難しいんじゃないでしょうか?
これがさらりとできるのはほんの一部のプレイボーイ達だけじゃないでしょうか?
しかも中学生でそういうプレイボーイだったら、いったいどういう男なんでしょうか?
妻はそういう男は絶対にやめた方が良いといいます。
将来絶対に苦労することになるからやめた方が良いといいます。
僕も、我が娘がプレイボーイの手に落ちるのが我慢がなりません。
妻の攻撃はすさまじかったです。
娘の好きな男の子がどんな子か知らないけど、その子だけはやめなさいという強い調子です。
娘を説得するために、僕も妻と出会う前の恋愛の話を娘に聞かせましたが、そうすると妻が起こり始めました。
それを見て娘はとても楽しそうです。
「なんでそんなに怒るの?やっぱりママはパパのことが好きなんじゃないの?」と笑いながら尋ねます。
僕はつい調子に乗って、
だからいつも言ってるだろ?
ママはパパのことが好きだって。
ガハハハ
とかましてしまいます。
普段だったら、半殺しにされる場面ですが、この時は大丈夫でした。
そういう話は、12時45分まで続きました。
僕もいい加減に眠くなって来たので、もうそろそろおしまいにしようと言いました。
娘は面白いし暇だからもっと話したいと言います。
でも、もう深夜だし、今回はここまでという事で終わりにしました。
その時、もう娘はすっかりふっきれたようで、手術のことは忘れたようでした。
かなり揉めに揉めましたが、娘の本心に迫る事ができ、最後は笑顔で終われたので、本当によかったです。
これが、今回の我が家の大騒動でした。
このような長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。