城崎温泉に行って来ました。志賀直哉の足跡を追って。

男の一人旅

こんにちは、鹿野一郎です。
朝は3時に起きて千葉の佐倉から兵庫県の城崎温泉まで、およそ700kmのロングドライブをしました。
男の一人旅です。

うちの車は12年前の車なので、ナビも12年前のものです。
なので、最近出来た道路は案内する事が出来ません。
今回は、東名高速を通り、伊勢湾岸道路、新名神高速道路を経て京都南インターチェンジで下におりました。
新東名高速道路を使えば、もっと早く来られたようです。
家を出たのは午前3時半で、城崎温泉に着いたのは午後1時半でした。
片道に10時間を要しました。
もう若くないので、きついドライブでした。楽しかったですけどね。

今日のドライブ

高速道路には、千葉北インターから乗りました。
高速に乗ったのは午前3時半でした。
最初の休憩は富士川サービスエリアで取りました。
まだ空が暗かったですが、富士山がきれいに見えました。
時刻は午前5時半で、千葉北インターから2時間でした。
学生時代や若い頃に、富士川サービスエリアは何度も利用していますが、いつも夜中だったので、サービスエリアから富士山が見えることは、知りませんでした。
夜明け前の富士山はとても神々しかったです。

2回目の休憩は浜名湖サービスエリアでした。浜名湖はやっぱりとても大きいですね。うちの近くの印旛沼とは大違いでした。
大きすぎて、端から端まで見通す事が出来ませんでした。
ここに寄ったのは7時半でした。

浜名湖の一部です。


若い頃はガソリンが空になるまで無休憩で走り続けたものですが、さすがにもうそういう事はできないです。
昨夜は3時間しか寝られなかったので、運転で少しでも眠気を感じたら休憩する事にしました。

3回目の休憩は、給油のための休憩でした。場所は新名神高速道路の土山サービスエリアでした。
時刻は覚えていません。
土山と言われても、一体どこなのか全く見当がつきませんでした。
ガソリンはリッター191円です。
最近、ウクライナ危機などでガソリンが値上げしているというのは知っていましたが、それでも191円には驚きました。
まあ、高速道路なので、市中より高いんだと思いますが。

2回目の休憩と、3回目の休憩の間に、名古屋で名港大橋という橋を渡りました。
海の上を渡る橋ですが、海面からの高さはかなり高かったと思います。
ちょっと調べてみたら、桁下は38mから47mだそうです。
体感的には100mぐらいあったように感じましたが。

名港大橋というのは3つの橋から成っているようです。
名港東大橋、名港中央大橋、名港西大橋と言って、全部合わせて名港トリトンと呼ぶそうです。
合計で橋の長さは2600m程度にもなるそうです。
眼下に見える工業地帯は凄かったです。
大型タンカーや、大型のクレーンなどが多数あり、圧倒的な迫力でした。
物凄い工業地帯だと思いました。
千葉県の幕張では、工業地帯を見学する遊覧船があり、娘が小さかった頃に何度も乗りましたが、東京湾の千葉付近の工業地帯を遥かに上回る、圧倒的なスケールだったと思います。
千葉から城崎温泉を目指すのに、名古屋港を通るというのは、遠回りだと思いますが、あの工業地帯を見る事ができたので、文句はないです。
今回の旅行は一人旅だったので、運転中に写真を撮ることはできません。
それがとても残念です。
可能なら、誰か別の人に運転してもらって、写真も別の人に撮ってもらって、僕は景色を見る事に集中したかったです。

夜が明ける前に通過した東京湾のレインボーブリッジも景色がきれいでしたが、僕は名港トリトンの方が好きです。
巨大な橋というのは、それだけで面白いですね。
これまでに通った事がある橋で、印象に残っているのは、瀬戸大橋、関門橋、明石海峡大橋、大鳴門橋です。
中でも瀬戸大橋の迫力は段違いでした。

浜名湖の一部です。

名港トリトンを通過すると、左手に観覧車が見えて来ました。
今回のドライブでは観覧車をよく見ます。
富士川サービスエリアでも観覧車が見えたし、浜名湖サービスエリアからも観覧車が見えたような気がします。
今回は見逃しましたが、葛西臨海公園の観覧車も高速道路から見えたはずです。
そして、名港トリトンを渡った後に、また観覧車が見えて来ました。
特に気にせずに見ていると、巨大なジェットコースターのレールが見えて来ました。
ただの観覧車ではなく、遊園地のようです。
近づくにつれて、それがかなり大規模なジェットコースターであることがわかってきました。
そこで、気付きました。
ナガシマスパーランドです。
行った事はないですが、よく知っています。
中部地方最大の遊園地です。
富士急ハイランドには娘と3回行きましたが、いつかはナガシマスパーランドにも行きたいと思っていました。
ナガシマスパーランドまで片道5時間半のドライブです。
さすがに遠いですね。
娘と去年の夏に富士急ハイランドに行った時は、首都高速の渋滞を避けるために、朝の3時に家を出ましたが、5時には富士Qに着いてしまいました。
8時半まで中に入れないので、車の中で寝て待つしかありませんでした。

ところで、ナガシマスパーランドは三重県にあります。
やっぱりおかしいと思いました。
千葉から城崎温泉を目指すなら、まずは琵琶湖の北を通るか、南を通るかでコースが分かれます。
僕は南を通る事にしましたが、そうならば、愛知県の後は、滋賀県、京都府、兵庫県と行けば良いはずです。
なぜ三重県を通る必要があるんでしょうか?
この時点で、僕はカーナビの案内にかなり疑問を抱いていました。
まあ、名港トリトンとナガシマスパーランドを見る事ができたので、文句ばかりではありませんが。

しばらく行くと、ジャンクションのようなところを通り、別の高速道路に合流しました。
するとまもなく、「京都東」という看板が見えました。
僕はその景色をはっきりと覚えていました。

大学を卒業する時、友達のさとっちと2人で長崎、阿蘇山まで車で旅行に行ったんですが、その時にこの景色を見ました。
「京都東」というのを見て、順番を入れ替えると、「東京都」になるなと思ったのをはっきりと覚えています。
当然、わかると思いますが、「ひがしきょうと」ではなくて、「とうきょうと」です。

あの時は、千葉県の穴川インターから高速道路に乗り、地図を見なくても京都東まで行く事ができました。
まだ、ナビがない時代でした。
地図と言ったら紙の地図でしたが、東名高速、名神高速、中国自動車道、九州自動車道と乗り継いでいけば、九州まで行けるはずだと思っていたので、道路標識だけを頼りに運転していましたが、それでも京都東にはたどり着きました。
やっぱり、今回のドライブは無駄に遠回りしているようです。

確かに二股を左に行けとナビに言われた時、おかしいと思いました。
伊勢湾岸道路というのを経て新名神に行くような事が看板に書いてありましたが、普通に名神で良いのでは?と思いました。
でも、新名神と名乗るぐらいなので、もしかしたらそっちの方が近いのかと思って、ナビに従いました。

すると今度は、京都南で一般道に降りるように言われました。
てっきり高速道路で城崎温泉の近くまで行けると思っていたので、とても驚きました。
でも、従う以外に方法がないので、下におりました。

ここからしばらくは迷子の時間です。
迷子と言っても、ああでもないこうでもないとぐるぐると走り回ったのではなく、セブンイレブンの駐車場で、カーナビ、iPhoneのGoogle マップを相手に格闘する迷子です。
セブンイレブンの駐車場に車を止めて、一度ナビの案内を終わりにして、改めて城崎温泉への道を検索しました。
すると残りは150km程度で、所要時間は4時間となっていました。
いくらなんでもそんなに時間がかかるのはおかしいと思ったので、カーナビは相手にしない事にして、iPhoneでGoogleマップを使って検索してみました。
すると、2時間半で着くと言います。
おそらく12年前にはなかった高速道路が出来たんでしょう。

iPhoneに従って運転しようと思ったら、またエラーが発生しました。
ここから先は、僕が中年のおじさんだから起こったエラーで、若い人や僕の娘だったらなんなくクリアする事だと思います。
普段、iPhoneのGoogleマップで検索すると、目的地を入力するだけでコースが示されます。
あとは、案内開始にすれば、案内してくれます。
でも、この時は違いました。
何故か、現在地と目的地を両方入力するようになっていました。

鹿野一郎
鹿野一郎

いつもと違うな。

と思いました。
現在地がどこかわからなかったので、とりあえず「現在地」と入力しました。
そうすると、2時間半で着くという表示が出たんです。
ほっとして、「案内開始」をタップしようと思ったら、どこにもそれがないんです。
何かがおかしいと思いました。
そもそも現在地を入力する事がおかしいし、きっとそれも関係しているに違いないと思いました。
しばらく格闘しても訳が分からなくなる一方だったので、もうナビには頼らず、道路標識だけで城崎温泉を目指そうかと思いました。
そう思ってしばらく走っていると、突然iPhoneに「案内開始」のアイコンが出現したので、それをタップして窮地を脱しました。
程なくして、京都縦貫自動車道という有料道路に乗りました。

まだおかしな事がありました。iPhoneが全然喋らないんですよ。
普段だったら、「北へ進みます。左折です。直進です。」
などのセリフを言うんですが、何をどうやっても喋らないです。
Google マップがミュートになっていない事は確認しました。
iPhoneのボリュームが0になっていない事も確認しました。
でも、うんともすんとも言わないです。


今気づいたんですが、iPhoneがマナーモードになっていたのがいけなかったんでしょうか?
運転中は全く気がつきませんでした。
画面によく注意していれば問題はないので、音声がないまま城崎温泉まで行きました。

京都縦貫自動車道は京都から日本海までほぼ一直線に貫通する道路です。
カーナビだと、ところどころ未開通の部分がある事になっていましたが、2022年3月現在では、すべての区間が開通しているようです。
その道路は、山があろうが、谷があろうが、トンネルと端で南北に縦断します。
未開通部分をすべて山道でくねくね行きながら繋いで行ったら、それは確かに4時間かかるでしょうね。
カーナビが案内したのはそのルートでした。
その通りに行っていたら、とんでもない事になっていましたよ。
高速道路は時速100kmで直進できますが、山道はくねくね行って、回り道をするだけでなく、せいぜい時速30kmぐらいしか出せないですからね。

今回のドライブで、カーナビの信用は地に落ちたので、次からはiPhoneに道を聞く事にします。
でも、案内される道が確かなら、iPhoneの画面より、カーナビの画面の方が周囲の様子もわかりやすくて良いんですよね。
だから今回も最初はiPhoneではなく、カーナビを使いました。
12年も経過すると、道路もそうとう変わるんですね。
この車は次の車検で買い換える予定です。
車本体よりも、カーナビの方が古すぎてダメです。

円山川です。最初は海だと思いました。

城崎温泉

高校時代に、国語の教科書で、志賀尚哉の「城の崎にて」を読んだ人は多いと思います。
城崎温泉は、兵庫県の日本海側にあるので、関東から行くにはとても遠い温泉地です。
高校の頃からいつか行きたいと思っていましたが、なかなか実現しませんでした。

実際に行ってみてたら、完全に観光開発されていました。
城崎温泉には城崎温泉駅という駅があって、京都や大阪から特急で一本で来られるようです。
地図で見ると、城崎温泉は円山川という川の河口付近にあります。
円山川は大河と言って差し支えないと思いますが、この円山川に注ぐ小川の両側に温泉宿がずらりと並んでいます。
駅からこの小川までの距離は200mから300mぐらいだと思いますが、この通りの両側も、旅館やお土産や、飲食店などがずらりとならんでいます。
カニを売っている店がとても多かったです。
「城の崎にて」でも、本文に


そして尚よく見ると、足に毛の生えた大きな川蟹が石のように疑然としているのを見つける事がある。

志賀直哉「城の崎にて」より

とあります。
この辺りは、カニがたくさん取れるんですね。

温泉街には若い人のグループが多かったです。
みんな、志賀直哉の「城の崎にて」に影響されてここまで来たのでしょうか?
どうも違うように見えました。
多くの人が食べ歩きを楽しんでいるようで、志賀直哉がどういう心境で、どのルートを歩いたのかをなぞりにきた感じではなさそうでした。
年配の人はほとんどいなくて、若い人のグループが多かったです。
グループは男性グループと女性グループにきれいに分かれていて、男女混合グループは見ませんでした。

僕は車を駐車場に止めて、トランクから自転車を出しました。
自転車で温泉街を散策するために、家から持って行きました。
自転車はとても重宝しましたが、結果として城崎温泉はそれほど大きな温泉街ではないので、自転車がなくてもすべて回る事ができたと思います。

僕の愛車(自動車)と愛車(自転車)


走り始めてすぐに、「城の崎にて」に登場する「一の湯」が見つかりました。
思わず写真を撮りました。
さらに奥に行くと、本文には出て来ませんが、志賀直哉が滞在していた旅館「三木屋」がありました。
思わず写真を撮りました。

一の湯です。「城の崎にて」に名前だけ登場します。


ケーブルカーがあるのも見えました。
向きを変えて反対側に進んでいくと、本文に出てくる東山公園の標識がありました。
行ってみると、物凄い登り坂だったので、自転車では登れませんでした。

東山公園の標識と、僕の愛車。


自転車を押してなんとか上まで行きましたが、公園という割にはなにもないところです。
一番高いところに展望台があったので、そこに登ってみると城崎温泉を一望する事ができました。
なるほど、「城の崎にて」には、東山公園について次のような記述があります。


ある午後、自分は円山川、それからそれの流れ出る日本海などの見える東山公園へ行くつもりで宿を出た。

志賀直哉「城の崎にて」より


でも、志賀直哉はここには来なかったようです。
一の湯から東山公園までは歩いて10分もかからないと思いますが、逆方向の山の方へ向かって歩いたようです。

東山公園の展望台からの眺めです。円山川があり、右手に城崎温泉駅です。


ひたすら山の方へ歩いていき、何故か有名になった桑の木のさらに先まで行ったところで、偶然イモリを殺してしまいます。
桑の木がどこにあるのかは、自転車では見つける事ができませんでした。
城崎温泉の地図は頭に入れていたつもりだったんですが、行ってみると想像と全く違っていたので、頭の中の地図は崩壊しました。
もっとこじんまりとした小さな温泉街だと思っていました。
あんなに観光開発されているとは思っていませんでした。

最終的に、何故か有名な桑の木は見つける事ができましたが、それは城崎温泉を引き上げて、次の目的地に移る時でした。
その桑の木は、城崎温泉からはかなり離れたところにあります。
あの距離は自転車でもきついです。

何故か有名になった桑の木。他の木はすべて別の種類で、桑の木はこれだけなんでしょうか。


志賀直哉はあそこまで歩いたとされていますが、あの距離を、しかも登り坂を歩くんだったら、そうとうな覚悟がないと歩けないと思います。
きっと志賀直哉が歩いた頃は、今のように舗装はされていなかったんだと思います。
今は自動車が走る道路になっていますが、歩道がないので、あそこを大怪我で九死に一生を得た人が歩く姿は想像できないです。
きっと昔は全く違う道だったんだと思います。

もう一つ、本文に


山陰線のトンネルの前で線路を越すと道幅が狭くなって路も急になる、流れも同様に急になって、人家も全く見えなくなった。

志賀直哉「城の崎にて」より


という表現があります。
トンネルに近い踏切はすぐに見つかりました。
温泉街を流れる小川を単線の線路が渡り、すぐに城崎温泉駅があるんですが、線路の反対側はトンネルになっています。
でも、路が急になるとか、流れも級になるとか、人家も全く見えなくなったという表現を考えると、別の場所かもしれないです。
僕見つけた踏切は、駅のすぐ近くで、多くの人が往来していました。
電車で来る人は、トンネルを抜けると小川を渡り、城崎温泉駅に着くんですね。

踏切の上から撮影しました。

城崎温泉は、志賀直哉が踏切事故で死にかけた後、3週間ほど滞在し、そこで生と死について考えた場所です。
勝手にもっとひっそりとした場所だと思っていました。

城崎温泉駅の改札です。ICOCAが使えるようです。画面中央の青い光がそれですが、とても大きいです。

僕の宿泊地は、城崎温泉ではなく、少し離れた竹野海岸というところです。
なので、城崎温泉では温泉に入っていません。
それどころか食事もしていません。
おみやげは買いましたが、他は自転車と徒歩で温泉街を歩き回って写真を撮っただけでした。
でも、とても楽しかったです。
できる事なら、妻、娘と3人で来たかったです。

高校時代に「城の崎にて」を読んで、いつかは行きたいと思っていました。
僕は予備校で働いているんですが、生徒の中にも「城崎に行きたい」という生徒はいました。
わずか8ページの短編なんですが、何か魅力を感じました。

今回は、その城崎温泉を訪れる事ができて、とても良かったです。
ありがとうございました。

城崎温泉の駅前です。

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