物凄く久しぶりに映画「ロッキー3」(1982年)を見ました。スカッとする切れ味の良い映画だと思います。

シルベスター・スタローン

こんにちは、鹿野一郎です。
久し振りに映画「ロッキー3」(1982年)を見ました。
おそらく大学生の時以来だと思うので、30年振りぐらいだと思います。

高校生時に、友達の勧めで、「ロッキー」(1976年)を見ました。
これはテレビで見ました。
テレビだと日本語に吹き替えられているし、放送時間に合わせて本編がカットされたり、コマーシャルが入ったりしますが、それでもあの映画は面白いから見ろと言われて、見ました。
僕はそれまでロッキーというのは、ボクシングの映画だという事しか知りませんでした。

あの当時、ボクシングと言ったら、何と言ってもアニメ「あしたのジョー」でした。
ボクシングはアニメでこそ面白いのであって、実写映画だったらつまらないに決まっていると思いましたが、友達があまりにも勧めるので、見る事にしました。
すると、アニメとは全く違った作風で、殴り合いのシーンよりも、ストーリーに深く感動してしまいました。
そしてすっかりシルベスター・スタローンに酔ってしまいました。

そしておそらく同じ年に、やっぱりテレビで、シルベスター・スタローンの「ランボー」(1982年)が放送されました。
この2作品を見たことで、僕は完全にスタローンのファンになりました。
そしてそれは今でも変わっていません。



僕が高校生だったのは昭和58年の4月から61年の3月までですが、あの頃世の中にはインターネットなんかありませんでした。
それどころかDVDもありませんでした。
CDはすでにありました。


僕が高校1年生の時にCDが発売されたんですが、当時は「針のないレコード」「光で音が出るレコード」「超小型のレコード」と話題になりました。


ビデオデッキは僕が中学生の頃にはこの世に出回っていましたが、家にビデオデッキがある人は、クラスに1人いるかどうかでした。

僕が大学生になった頃、ようやく世の中にレンタルビデオというものが出来始めました。
僕が初めて訪れたレンタルビデオ店は1作品1泊2日で700円という、今から思えばものすごく高い値段でしたが、それでも当時はとてもありがたかったです。
家にビデオデッキを2台持っていれば、700円で映画をコピーできてしまうので、映画館に行くより余程安いと思いました。

でも、今みたいなデジタル技術ではないので、ダビングを繰り返すと明らかに画質は落ちます。
ダビングのダビングになると、もう鑑賞に絶えないほど画質は落ちます。
当時はそういう時代でした。

僕は「ロッキー」は高校生の時にテレビで見て、大学生の時にレンタルビデオで借りて見ました。
やっぱり英語音声、日本語字幕の方がはるかに面白かったです。


「ロッキー2」も高校生の時にテレビで見て、大学生になってからレンタルビデオで借りて見ました。
そして、その頃に「ロッキー4」(1985年)が映画館で公開されたので、友達と見に行きました。


「ロッキー3」を見たのは、「ロッキー4」より後で、順番が逆になりましたが、「ロッキー3」はテレビで見ました。
そしてその放送を録画しました。
この頃にはビデオデッキを2台持っていたので、自宅でダビングが出来たんです。

我が家にビデオデッキがやって来たのは、僕が大学に合格した時でした。
合格のお祝いにビデオデッキを買ってもらいました。
当時は20万円もする高価な電気製品でした。


大学生になってアルバイトでお金を貯め、秋葉原の電気街で、再生専用のビデオデッキを5万円ぐらいで買いました。
再生専用のビデオデッキで、レンタルビデオで借りて来た映画を再生し、それをもう一台のビデオデッキで録画するようになりました。


この時から、僕の映画のコレクションはどんどん増えていき、多い時は200本ぐらいまで増えたと思います。
置く場所がなくて困ったのをよく覚えています。


でも、当時のビデオテープは、10年も経過すると経年劣化で何も映らなくなり、結局全部ゴミになりました。

「ロッキー」と「ロッキー2」はテレビ放送を見て、レンタルビデオでも借りてみましたが、おそらくレンタルビデオで借りてダビングはしなかったと思います。


「ロッキー3」はテレビ放送を録画し、それを英語音声で何度も繰り返し見ていたので、レンタルビデオでは借りませんでした。


「ロッキー4」は映画館で見て、レーザーディスクも買いましたが、DVDの発明によりレーザーディスクが歴史から姿を消してしまったので、長らく屋根裏に保存した挙句、デッキごと全部捨ててしまいました。

「ロッキー5」は映画館で見て、さらにビデオテープを買いました。
この頃には結構裕福な大学生になっていたようで、ダビングによる画質の劣化が気に入らず、ビデオテープを買ったんです。
でもレーザーディスクを買わなかったという事は、この頃にはすでにDVDが破竹の勢いでレーザーディスクの縄張りを荒らしていたんだと思います。


「ロッキー・ザ・ファイナル」は映画館で見ましたが、それ以来見ていません。

今回は「ロッキー3」を久し振りに見た感想を書かせていただきます。

「ロッキー3」は、スカッとする切れ味の良い映画

「ロッキー」「ロッキー2」はどちらも感動する映画だと思います。
ドラマがよく出来ていて、試合のシーンをみると最後は感動したものでした。
でも「ロッキー3」はかなり作風が違うと思います。


初めてテレビで「ロッキー3」を見たときは、とてもスカッとしました。
特に感動はしませんでしたし、ストーリーに感銘を受ける事はなかったですが、とにかくスカッとしました。
スカッとした理由は主に2つです。

まずは試合が、前2作みたいに15ラウンドまで進まず、3ラウンドであっさり終わる事。
次はハルク・ホーガン(プロレスラー)とのエキシビジョンマッチが最高に見応えがあった事、です。

「ロッキー」「ロッキー2」では、ロッキーとチャンピオンのアポロ・クリードは最終15ラウンドまで殴り合い、お互いに顔を腫らせて、血を流し、結構な修羅場になります。
でも、ロッキー3は違いました。


映画の中でロッキーはクラバー・ラングと2回試合をしますが、最初にチャンピオンとして戦ったときは、2ランドでKOされて負けます。


このとき、ロッキーは少し顔が腫れて、血を流しますが、クラバーは無傷でした。
その後、ロッキーが再起をかけて挑戦者としてクラバーに挑むときは、3ラウンドで決着がつきます。
ロッキーは血を流していましたが、顔は腫れておらず、KOされたクラバーば血も流さず、顔も腫れていませんでした。

どちらも試合がすぐに終わるので、「ロッキー」「ロッキー2」のようにBGMを流して試合のシーンをダイジェストで進めていくという演出はありません。
試合の場面はいわゆるノーカットで描かれます。
これがとても良かったと思います。

また、クラバーが繰り出す大振りのフックを、ことごとくロッキーがヘッドスリップでかわし、ストレートで殴り返すのは、とてもスカッとしました。


実際の世界タイトルマッチだったら、もっとパンチのスピードが速くて、ボクサーももっと複雑な動きをしますが、映画だとあのぐらいシンプルな試合の方がスカッとするんだと思いました。

映画の冒頭では、ロッキーがアポロを倒して世界チャンピオンになったあと、タイトルを10連続防衛する様子が描かれています。
そして映画が始まると、程なくして、チャリティーのために、ボクシングの世界チャンピオンとプロレスの世界チャンピオンのエキシビジョンマッチが行われます。
そこで登場したプロレスラーが、ハルク・ホーガンでした。


ハルク・ホーガンはアメリカで活躍していたプロレスラーで、日本の全日本プロレスや新日本プロレスには所属していなかったと思うので、日本のプロレス中継では見た事がなかったと思います。
見た事がなくても、とてもよく知っていました。

ハルク・ホーガンは201cmの大男で、試合前に177cmのスタローンと向き合って立つと、物凄い身長差がありました。


映画ではそれをホーガンの頭越しに、斜め上から撮影していますが、あの角度はとても良かったと思います。


本当に大人と子供というぐらい体の大きさが違って見えました。

試合は序盤からプロレスラー役のホーガンが暴れて、ロッキーを責め立てます。


プロレスの技の名前は忘れてしまいましたが、相手の体を横にして持ち、自分の膝の上に勢いよく落として腹部を痛める攻撃や、相手の体を180度逆さまにして持ち上げた後、後方に倒れてマットに背中から叩きつける技などが次々に決まり、ロッキーは大苦戦します。
ギロチンドロップも炸裂します。


その後、プロレスラー役のホーガン(役名はサンダーリップ)はさらに暴れ回り、レフリー、警備員や観客まで襲いますが、ロッキーはそれを見かねてグローブを外し、素手で戦うことを決めます。
そしてサンダーリップをリングに呼び戻し、素手で殴りつけて最後はサンダーリップをリング外へ投げ落とします。


あの試合の場面は本当に見ていてスカッとします。
今回久し振りに見ても、やっぱりあのボクシング対プロレスの試合の場面が一番面白いと思いました。
映画の中ではロッキーが完全に善、サンダーリップが完全に悪という位置づけで試合が行われます。
会場の観客は、全員ロッキーびいきで、ロッキーには声援を送りますが、サンダーリップにはブーイングを送ります。


プロレスの世界チャンピオンなんだから、サンダーリップのファンもそれなりにいるはずなんですが、会場は可哀想なぐらい全員ロッキーファンでした。

突然終わる、切れ味の良い幕引き

ロッキー3は、映画の終わり方もとても素晴らしいと思います。
ロッキーがクラバー・ラングに雪辱を果たし、世界チャンピオンに返り咲いたところで映画が終わるのかと思ったら、終わりません。
ロッキーをトレーニングしたアポロ・クリードが、約束だからと言って、ロッキーと2人だけでスパーリングをします。
本当は自分だってまだやれるんだという事を確認したいのか、まだロッキーに勝てると思っているのかはわかりません。
2人は和やかに談笑しながらリングに上がり、スパーリングを始めます。
お互いに軽やかなフットワークで距離をとっており、なかなか殴りかかりません。
僕は初めて「ロッキー3」を見たときは、「この映画はいつになったら終わるんだろう?」と疑問に感じるとともに、少々不快な気分になって来ました。
勝ったところでスパッと終わりにした方が良いんじゃないのか?
なんでこんなシーンをだらだら付け加えるんだ?
と思っていたら、2人が同時に殴りかかり、そこで映像が止まります。
止まったと思ったらそのまま同じ場面の油絵に画面が切り替わり、映画のテーマ曲である、サバイバー(というバンド)の、アイ・オブ・ザ・タイガー(という曲)が、いきなりサビの部分から流れます。
あの終わり方はあまりにも鮮やかで、本当に衝撃的でした。
いつまで続くんだ?と思っていたところにあれを持ってこられて、僕は思わず「参りました!」と思いました。
本当に素晴らしい終わり方だと思います。
あれもあの映画のスカッとする部分の一つだと思います。

不自然に感じた脚本

大学生の頃は、ロッキー3を何度も見ましたが、毎回スカッとするばかりで、映画に何の疑問も違和感も持っていませんでした。
でも今回はいくつかの違和感を感じました。


最大の違和感は、クラバー・ラングに再び挑戦すると決めたロッキーが、どうしてあそこまでトレーニングに集中できなかったのか?です。
これが最大の謎でした。


あんなにやる気がないなら、アポロから再戦を持ちかけられた時に断れば良いのに、その場では二つ返事で引き受け、フィラデルフィアから飛行機でカリフォルニアまで移動したのに、行った先でやる気をなくしてトレーニングに集中できないというのがどうしても理解できませんでした。


カリフォルにはロッキーの他、妻のエイドリアン、エイドリアンの兄のポーリーの3人で行きます。
ロッキーとエイドリアンの子供はメイドに任せてフィラデルフィアの豪邸に残します。
そこまでして長期のトレーニングに出かけるというのは並大抵の覚悟ではないと思います。

例えば今僕に仕事上で大きなチャンスが訪れたとしましょう。
僕の仕事は予備校講師なんですが、例えばアメリカで1年間授業をしてくれと頼まれたとしましょう。
絶対にあり得ない話ですが、例えです。
そしてその仕事をうまく成功させれば、大きな見返りがあることがわかっているとしましょう。
じゃあ、そうなった時に、中学生の娘を1人家に残して、妻と2人でアメリカに行くのかと言われたら、あり得ない話です。

子供を置いて家を出るなんてあり得ない話です。
ロッキーのように大金持ちで、メイドさんが何人もいて、何の心配がないとしても、離れて暮らすなんて論外です。
万が一行くことになっても、日本人の感覚だと、僕が1人で行くでしょう。
いわゆる単身赴任ですね。
エイドリアンまでついていくというのは、アメリカ人だからなんでしょうか?
ちょっとよくわからないです。

親子は一緒が一番ですね。

カリフォルにはにはアポロがボクシングを習ったジムがあります。
貧しい街の貧しいジムです。
そこでハングリー精神を取り戻すために、トレーニングをします。
ぼろいホテルに泊まり、朝から晩まで汚いジムでトレーニングを続けます。
それがわかっているならば、エイドリアンは家で子供の面倒を見ていた方が良かったのではないでしょうか?
ボクサーの妻というのは、夫のトレーニングをずっと見ているものなのでしょうか?


少なくとも僕だったら、自分が筋トレをしているところを妻にじっと見られていたら、たまったものではないです。
出て行ってくれ、という事になるでしょう。
娘が小さいときは、僕がトレーニングをしているときに部屋に入って来て、僕に話しかける事がよくありました。
カールとかサイドレイズをしているときは良いですが、デッドリフトをしているときは危険だから話しかけないようにと何度も注意しました。
でも、ロッキーはエイドリアンに見守られている方がトレーニングに熱が入るようです。
ずばり、僕とは正反対です。

話は変わりますが、ポーリーは大変な友達思いですよね。
わざわざそんな汚くて貧しくて治安の悪いところに一緒について来てくれるというのは、並大抵の友情ではないと思います。
さらにいうと、ポーリーが一緒に行って、ロッキーのトレーニングに何かプラスになったのかと言われると、大いに疑問です。


もしかしたらロッキーは、エイドリアンだけでなく、ポーリーにも来てもらった方がトレーニングに熱が入ったんでしょうか?
その割には、やる気が起きなくてエイドリアンに怒られることになるんですが。

今僕は、ロッキーがカリフォルニアに行った事が疑問だとか、エイドリアンやポーリーも一緒に行った事がもっと疑問だと述べていますが、これは今ここで文章を書き始めてから新たに湧いて来た疑問です。
本当に書きたかったのはこの事ではなくて、何故ロッキーはトレーニングに身が入らずに、やめたいとまで言い出したのか?です。

話が戻りますが、映画の中でロッキーの偉大な功績を称えるために、フィラデルフィアの博物館の前に、ロッキーの銅像が立てられることになりました。
ロッキーはその除幕式でスピーチをしますが、そこにクラバー・ラングが乱入して、おれと勝負しろとまくしたてます。
初めはロッキーは相手にしないつもりでしたが、クラバーの挑発は執拗で、最後はエイドリアンにまで声をかけます。
「もし良かったら今夜俺のアパートに来な。本当の男を見せてやるぜ!」
この言葉でロッキーは怒りが爆発し、クラバーに掴みかかろうとしますが、警備員に抑えられてその場は収まります。

激しい怒りを持ったロッキーはクラバーと戦うことを決めますが、トレーナーのミッキーは「やるならオレ抜きでやれ。」と言って、試合に同意してくれません。
自宅に戻った後、ロッキーとミッキーは話し合いますが、この時に初めてロッキーは、自分が弱い挑戦者ばかりと試合をして来たと知らされます。
チャンピオンには相手を選ぶ権利があるので、ミッキーがいつも勝てそうな相手ばかりを選んで試合を組んでいたと明かされます。


ロッキーはこれにショックを受け、かなり落ち込みますが、それでももう一度だけ試合をしたいと言って、クラバーとの試合になんとか同意してもらいました。

その後、トレーニングが始まりますが、それは初めて見た時にも強い違和感を覚えたほど、ふざけたトレーニングでした。
本当にやる気があるのかと言いたくなるほどでした。


練習会場にはファンが自由に出入りできるようになっていて、周りはファンだらけです。
トレーニング中でもファンから頼まれれば一緒に写真も撮るし、ほっぺにキスもさせてあげます。
会場には生演奏のオーケストラまでいて、シャボン玉もとんでいます。

「あの怒りはどこへ行ったんだ?」と強い違和感を覚えました。
ミッキーはロッキーにどなりつけ、「こんなところで練習が出来るか!昔のジムに戻るぞ!」と言いますが、ロッキーはにやけていてまるで相手にしません。
そんな調子でトレーニングをしていたのに、最終日にトレーニングを終えたとき、ミッキーはロッキーに言います。
「みんな甘いことばかり言うが、オレはお世辞はきらいだ。でもお前はよくやったぜ。」
大学生で初めてテレビで「ロッキー3」を見たとき、僕はこのセリフを聞いて、「どこが?」と思いました。
もう違和感しかなかったです。

カッパの人形

で、試合の日、トラブルが起きます。
準備を終えて控え室を出て、これからリングに向かうときです。
控え室を出ると、外には何故か大勢の人がいて、ごった返しています。
その人並みをかき分けて、ロッキー、ミッキー、エイドリアンが進んでいくと、階段の上からクラバー・ラングが降りて来ます。
そしてロッキーを激しくののしり、その場で殴り合いを始めたい感情がみなぎっていました。
これからリングの上で世界タイトルマッチを戦うのに、なんでその数分が待てずに会場の廊下で場外乱闘をしたいのか、理解不可能でした。


さらに、そもそもこのシーンは最初からあり得ないと思います。
世界タイトルマッチで選手とコーチ陣が控え室を出てリングに向かうとき、あんなに通路に人がたくさんいるはずがありません。
まるで通勤電車の中みたいに人がたくさんいますが、本来ならあり得ない話です。
それにリングに行く途中でチャンピオンと挑戦者が鉢合わせになるのもあり得ない話です。


世界タイトルマッチなら、会場も大きいでしょう。
そして、選手は例えば東と西から入場します。
東から来る選手に控え室は会場の東側に、西から来る選手の控え室は会場の西側にあり、お互いに距離がかなり離れているはずです。
そして両者がリングに向かうとき、動線は最後にリングで一致し、それまでは絶対に鉢合わせになる事はないはずです。
つまり、あれはあり得ない場面だと思います。

では何故あのような場面を作ったのか?
それはおそらく、ミッキーの心臓発作を起こさせるためだと思います。
試合前の揉み合いでミッキーは持病の心臓の発作を起こし、試合のセコンドにつく事ができなくなります。
すぐに救急車を呼びますが、ロッキーは試合を放棄して病院に行くと言い出します。
ミッキーは苦しみながらも、お前は1人でやれる、片付けてこいと言って、試合会場に送り出します。

ロッキーはミッキーのことを深く心配し、セコンドなしで試合に望みますが、クラバー・ラングの圧倒的な強さの前に、2ラウンドでKOされてタイトルを失います。


試合後、ロッキーは腫れて血塗れになった顔でミッキーに会いにいきました。
救急車はとっくに来ていましたが、ミッキーはロッキーが戻ってくるまで病院には行かないと言って、その場で待っていたんです。
ロッキーはミッキーに試合に勝ったような言い方をしますが、ミッキーが目を開けてロッキーの傷ついた顔を見たら、そのまま息を引き取ってしまいます。

これはロッキーにとっては大変にショックなことでした。
9年間も一緒にやってきて、一緒に世界タイトルを勝ち取ったトレーナーに先立たれてしまいました。
同時に世界戦に負けて、チャンピオンでもなくなりました。
途方もない喪失感だったと思います。

そこへ、アポロ(ロッキーの前の世界チャンピオン)が現れて、もう一度やろうと持ちかけます。
アポロが指導すれば必ずクラバーに勝てるというんです。
ここでロッキーはやる気になって、子供を家に残して、エイドリアン、ポーリーとカリフォルニアに行くことを決めます。


実に不思議です。
もし僕だったら、おそらく再戦はしないでしょう。
もうお金は十分にあるし、タイトルも10回も防衛したんだから、十分だと思います。
でも、ロッキーたちは違いました。

ロッキーは何故やる気になったのか?
僕の頭で思いつくのは以下のような理由です。

(1)クラバーと戦う前のトレーニングはふざけたトレーニングだったので、真面目にやれば次
  は勝てる。
(2)試合に負けたのはミッキーが倒れたことによる精神的ショックが大きかったからで、それ
  がなければ勝てる。
(3)エイドリアンまで引き合いに出して自分を侮辱した相手はやっぱり憎いから、叩きのめし
  たい。

これらの理由から再戦をするなら僕も理解できますが、トレーニングが始まってまもなく、ロッキーはやる気がなく、辞めたいと言い出します。
アポロはとても熱心に指導してくれているので、それを考えても不誠実な態度だと思います。
結局ロッキーはエイドリアンに厳しく喝を入れられて、迷いが吹っ切れ、トレーニングに集中することになります。


その時の会話も、僕にはよくわかりません。

エイドリアンに厳しく追及されて、ロッキーは逆ギレしながら、「怖いからだ!あいつにまた負けるのが怖いからいやなんだ。」と言います。
これはとても不思議なセリフです。
そんなにクラバーが怖いなら、アポロに話を持ちかけられた時に、「もう終わった話だ。」とかなんとか言って、断るんじゃないでしょうか?
その場で承諾し、我が子を家に残してまで、遠方の見知らぬ地へトレーニングをしに来たんです。
クラバーが怖いなら、こなければ良いと思います。

最初はやる気があり、クラバーを倒すつもりでいたけれど、実際にトレーニングが始まってみると自信を失い、怖くなって来たということなのでしょうか?
それならばよくわかります。


僕はパワーリフティングの試合の数ヶ月前には、だいたい調子がよくて、次の試合では自己ベストを大幅に更新してやる!と意気込んでいるんですが、試合が近づくと段々ナーバスになります。
思ったほど順調にパワーアップできなかったこと、減量が進むとパワーダウンする事などで、あの時のやる気はどこに行ったの?というぐらい、弱気になってしまいます。

エイドリアンはロッキーに対して次のように言いました。
ミッキーはあなたを騙していた訳ではなくて、自分の仕事をしていただけだ。
人からどう見られるかを気にする事はない。
引退すれば人々から忘れられて、最後に残るのはあなたと私、そんなときにこんな状態じゃやっていけないわ。
誰のためでもない、あなたのために挑戦すればいいじゃないの。
例え負けても精一杯挑戦する事が大切なんじゃないの。

この言葉でロッキーはすべてが吹っ切れて、トレーニングに集中するようになります。
「最後に残るのはあなたと私」というのは、深い言葉だと思います。
僕には中学1年生の娘がいますが、娘もいつかは家を出ていきます。
最後に残るのは本当に、僕と妻の2人です。
娘が家を出ていく日なんて、考えたくないですが、その日は必ず来ると思います。

今こうして考えてみても、どうしてロッキーがあそこでやる気を失ったのか、わかりません。
トレーニングに集中できないロッキーが、エイドリアンの言葉をきっかけにふっきれてトレーニングに火がつくのは、ロッキー2でも同じでした。
同じパターンの脚本にするためにああいう展開になったのかなと今は思いますが、結局この場面については、僕にはよくわかりません。


ただ、深く考えないで普通に見ると、実にスカッとする切れ味抜群の映画だと思います。

今回はこんなところです。
ありがとうございました。

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